■ポーランド 1 vs 1 北アイルランド[EURO 06月13日]
中学校の時に習いましたね、「イギリスの正式名称は“グレートブリテンおよび北部アイルランド連合”ですよ」と。その“北部アイルランド”こと北アイルランド。ジャガイモがたくさん取れるに違いない。この地域はジャガイモという要素を絡ませると、途端に西欧近代の光と影が忍び寄るわけですが、そんな北アイルランド、ユニフォームは緑。“北○○”と聞くと我々はついつい赤のユニフォームを想起するわけですが、赤は相手のポーランドのカラーという皮肉。
ともあれ、北アイルランドはアイルランドのうちイングランドに割譲された部分だけで出来ている小国。サッカー的にもいわゆる強豪国ではないので、守って守って守り倒すプロビンチャの戦術で立ち向かいます。システム的には5バックに3ボランチ、そして2トップ(アタッカーが2枚)という構成。なんだか、ヴァンフォーレみたいだぞ。対するポーランドは絶対エースを擁して、「優勝争いの常連ではないが、今回はひょっとして」みたいな立ち位置。川崎フロンターレみたいなイメージでしょうか。
ただ、相手の守備戦術との兼ね合いもあるのかもしれませんが、攻撃のスタイルは川崎とは少し違う。川崎の場合は「ボールを受けて相手を剥がして確実にパスを繋いでいく」を丁寧に繰り返すことで相手の守備陣を崩していく。それに対してポーランドは、「縦に速く、前線の選手がオラオラオラ!」と一直線にゴールへと進撃していく感じ。そういう意味では川崎フロンターレというよりも、むしろレノファ山口の方が近いような気もする。
前半は、北アイルランドの守備戦術に攻め倦ねていたポーランドですが、後半に入ると間もなく堅牢な人海ディフェンスを攻略。サイドからのグランダーのクロスにミリクが合わせて先制点。最終ラインと中盤の間に、少しギャップが出来てしまっていました。後半に入って北アイルランドは8番のデービスを中盤に下げるとともに、3ボランチの両サイドが少し高く陣取るようになっていたので、そのあたりのことが影響したのかもしれません。
先制されたとはいえ、北アイルランドのマイケル・オニール監督は慎重でした。2枚目のカードとしてアタッカーのワシントンを投入しますが、デービスをさらに一列下げて布陣そのものはいじらず、3枚目にアンカーのベアードから長身FWのウォードにスイッチすることで、ようやく5212っぽくなりました。実況では「4バックにしてきた」とされていましたが、そんな複雑な変更はしておらず、最終ラインは3CBのままだったように思います。
終盤に至っても、試合の構図は大筋で変更はなし。もちろん、多少なりとも北アイルランドは攻める時間を増やしていき、ポーランドはカウンターモードに移行していくわけですが、それでも、全体としてのイニシアティブはポーランドが握ったまま。というか、今ひとつ北アイルランドがゴールを奪えそうな気配は漂ってこない。でも、それで良いのです。北アイルランドの現実的な目標は「勝ち点獲得」でしょうから、グループリーグで自らの哲学を廃棄してカミカゼアタックなんてしちゃいけない。残り2戦も守備に磨きをかけるしかないでしょう。