「いつか来た道。」ってな試合【日本U23vsタイU23】の周辺をウロウロと…★テレビ観戦記★

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■タイU23 0 vs 4 日本U23[AFC U23選手権 01月16日]

BSで解説していた山本さんが仰っていたように、北朝鮮戦と違って、この試合はやりやすそうでしたね、U23日本代表。山本さんはその要因を初戦のプレッシャーから解放された2戦目であることに求めておりました。もちろんそういう要素もあるんだとは思いますが、それだけではないでしょう。北朝鮮戦よりもこの試合のほうがやりやすかった最大の理由、それはタイがパスサッカーで真っ正面からぶつかってきたこと。それがタイのスタイルのようです。

 

 

それで想起されたのが、ドイツワールドカップやブラジルワールドカップにおける我らが日本のフル代表。ジーコジャパンザックジャパンも、パスサッカーに磨きをかけて、テクニックを前面に押し出すサッカーを追求しましたが、ものの見事に跳ね返されました。この試合におけるタイU23の姿は、なんとなく、日本の“いつか来た道”とダブって見えました。愚直に自分たちのパスサッカーに邁進するだけでは、なかなか越えられない壁がありますよ、と。

 

 

やっぱりねぇ、“自分たちのサッカー!”ってスタンスは、諸刃の剣ですよね。結局それって、相手との力量の相対関係を踏まえない、考慮から外す、要するにある種の“思考停止”状態に陥っているわけですから。自分たちよりも総体としての力量が高い相手には“相手の長所を消す”って作業も必要になってくる。清原相手に159kmのストレートで勝負してホームランを打たれた伊良部のようなもの。4番打者を抑えるためには苦手なコースに苦手な球種の変化球を投げることも大切。

 

 

特にパスサッカーは危険。だって、パスサッカーってポゼッションできることを前提としたサッカースタイルですから、総体としての力量が自分たちにより高い相手には、構造的に機能しないことになっている。上回るためにはパスワークにより多くの人数をかけないといけないわけですが、そうなると守備がスカスカになる。この日のタイは、そういう感じでしたね。日本としては、ある程度攻められても、それなりに相手のパスを引っかけることくらいできますし、となればカウンターのチャンスも転がり込む。

 

 

試合を動かしたのは鈴木武蔵のパワフルさでした。相手のパスサッカーを嘲笑うかのようなシンプルな縦ポンで攻略してしまった。いつぞやのコンフェデかなんかでザックジャパンがブラジル相手に戦って、パウリーニョミドルシュートであっさりと試合を決められたシーンを思い出してしまいました。その後もイチイチ相手の心を折っていくようなタイミングで追加点を奪っていった展開も、あのブラジル戦をなぞっていた。そうなんですよね、この試合におけるタイU23と日本U23の関係性って、どこか日本代表とブラジル代表の関係性に相似していたような気がするのです。

 

 

思えばタイのプレミアリーグは1996年発足らしいですが、本格的に活性化するようになったのは2010年代に入ってから。いまや50人もの日本人選手やスタッフが所属しているんだそうだ。なんか、これもJリーグとブラジル人の関係に似ていませんか。スタッフも選手もJリーグにはブラジル人がたくさんいる。代表クラスもゼロではない。茂庭や岩政がタイに渡ったように、ジョルジーニョやレオナルドが日本に来た。そう考えると、日本サッカー界が1990年代に邁進した“いつか来た道”を、タイサッカー界は現在進行形で歩んでいるのかもしれません。