■清水の降格と都雀
いやぁ、降格が決まってしまいましたね、エスパルス。やはり「オリジナル10」のブランドは未だ健在ですから、降格経験のない「オリ10」クラブが、また1つ減ってしまったというのは、我々オールドファンには、微妙にショッキングです。しかも90年代初頭までは「王国」としてこの世の春を謳歌しまくっていた、静岡清水のクラブですから、インパクトがある。
スポナビブログとかでは、さすがにそういうこともないですけど、某コメント欄などを眺めていると、鬼の首を取ったかように田坂さんへの批判がぶつけられていますね。まぁ、「J2でも最下位、J1でも最下位」という部分だけ一面的に切り取れば、そういう罵詈雑言を浴びせかける正当性があるように感じてしまう人々が一定数いるのも理解できなくもない。
そういう田坂さん批判を見ていると、「世の中、面白いなぁ」と感じずにはいられません。自分が見聞した最新の情報しか覚えていない(新しい情報が入ると、古い情報は上書きされる)っていうのは「世論」の特性なんでしょうか。どう考えても、清水の転落に最も長期的かつ決定的な影響を与えたのは田坂さんの前任者だと思うんですけどね。
清水降格に関するニュースのコメント欄には大榎さんの「お」の字も見られないような。ひょっとしたら、早々にJ1残留を諦めたフロントが、クラブのレジェンドである大榎さんの名誉を守るため、より非難に晒されそうな状況にある人物として田坂さんを探し出し、新監督に仕立て上げのではなかろうか。水は低きに流れるもの、田坂さんなら、批判は大榎さんではなく田坂さんにいきやすいだろうから、これでレジェンドを守れるぞ!と。むむむ、なんたる深慮遠謀。恐ろしや、恐ろしや。
■清水降格の要因
ところで、なぜ清水は降格してしまったんですかね。これについては、すでに多くの分析がされているところですが、まぁ、ワタクシなりに感じたことを。清水降格の主要因は、煎じ詰めれば、「なぜ、大榎監督を早期更迭できなかったのか」というところに辿り着くように思います。で、大榎さんを早期更迭できなかった理由は、大榎さんがレジェンドだったからと言われています。
つまり、長谷川健太退任とゴドビ政権の“光と影”にまつわるフロントの不手際により、エスパルスというチームに対する、選手・サポーター・スポンサーなどの求心力が著しく低下した。その低下した求心力を回復させるべくレジェンド大榎を引っ張り出した。そうした求心力回復の切り札ゆえ大榎さんを手放せなかった、と。でも、クラブの求心力を大榎さんという特定個人のカリスマ性に頼っている時点で、すでにアウトなんですよね、ホントは。
で、そういう状況のなかで、外様ともいえる左伴さんが就任した。左伴さん的に、これは厳しい。つまり、いくら社長権限を付与されているとはいえ、外様であるにもかかわらず、クラブのレジェンドをさっさと解任するのは、クラブマネジメント上、事実上、不可能に近い。日本社会ですから、古株(=古老=既得権益者)の支持がなかれば、どれほど正しいことをしても、「笛吹けど踊らず」になるのは目に見えている。
となると、左伴さんとしては、周囲が納得せざるをえない状況に陥るまで、カードを切れなかったなじゃなかろうか、と。チームの成績のためには早期解任が必要でも、クラブに関わる人々全体のマネジメントを考えると、外様の左伴さんには「大榎さんを引っぱれるだけ引っぱる」以外の選択肢はなかったのかもしれません。なんてことをいうと「フロントのためにチームを犠牲にするのか!」みたいなこと言う人が出てくると思いますけど、こういうところが日本的組織の難しいところ。やっぱり、そうこう考えると、結局、クラブの求心力を大榎さんという特定個人のカリスマ性に頼っている時点でアウトだったということにしかいきつかなく、そういう状況を作ってしまった人々(あるいは集団的意志)に問題があったということになるでしょう。