“もう一つのニセ9番”についてアレやコレや提唱してみる【スイスvsフランス】の周辺をウロウロと…★ワールドカップ各試合を振り返る★

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■スイス 2 vs 5 フランス[WCグループE 06月21日]

前半の5分とか、そういう時間にジルーと激突したボンベルゲンが負傷して退場してしまった波乱含みの幕開け。オフトジャパンで言うところの柱谷哲二が序盤にいなくなるということでしょうから、それは一大事です。ただ、スイスの苦戦の本質は、そういうところにあるのではなく、前線にボールが収まらなかったことに尽きるでしょう。1トップのセフェロビッチの奮闘もむなしく、ジャカとかシャキリがなかなか前を向いて仕掛けることができませんでした。

 

 

そうなると、必然的に流れはフランスにいく。果たせるかな、先制点はフランス。バルビュエナが蹴ったコーナーキックにジルーが打点の高いヘディングで合わせてねじ込んだゴールでした。気落ちするスイスを尻目に、フランスは直後に追加点。スイスのバックパスをベンゼマがカットし、そのまま日向君ドリブルで突進。ラストパスを受けたマトュイディのイーグルショットががベナーリオのニアサイドを突き破りました。若林君なら止めていたでしょう。

 

 

前半の30分にはベンゼマがジュルーとの駆け引きに勝利しPKのチャンスを獲得します。しかし、これはベンゼマが止められる。詰めたキャバイエのシュートはバーに嫌われる。拾ったマトュイディのシュートも跳ね返され、トドメを刺しきれない。ってことになると、やおら、流れはスイスにいきそうなものですが、いかないのですね。スイスのコーナーキックの場面でフランスのカウンターが炸裂し、バルビュエナが決定的な3点目を前半のうちに決めてしまいました。

 

 

後半に入るとスイスはシャキリが右サイドからトップ下にポジションを移しました。で、後半の最初の15分間くらいはシャキリが巧みに空間を把握して、自由な動きからチャンスの予感を漂わせていましたが、それもフランスが4点目を入れるまでの話。右に開いていたシッソコが真ん中のポグバにパス。ポグバはフワッとしたパスでスイス守備陣の裏に抜け出したベンゼマにアシスト。そしてベンゼマが貫禄の決定力を見せつけました。

 

 

シッソコが起点となってベンゼマが決めた4点目に対して、5点目はお返しとばかりにマテュイディのパスを受けたベンゼマのラストパスをシッソコが決めたゴール。この時間帯になると、さしものシャキリも沈黙。フランスがやりたい放題に攻めまくるという展開に。それでも、守備陣がプッツンすることなく、試合を壊さないまま時間が経過していったのがスイス人の、というか白人さんの勤勉なところ。工業社会の一員は、勤務時間が終わるまで、ちゃんと労働するのです。

 

 

そんなスイスに、神様もお情けをかけたのか、ジュマイルの低空フリーキックがフランスの壁の足下をすり抜けていき、意地の1点を返すことに成功します。さらに試合終了間際には、右サイドで起点となったジャカがインラーとのワンツーから抜けだし、もう1点を返しました。50になってから集中力を途切れさせてしまったのは、ビハインドのスイスではなく、リズムよく戦っていたはずのフランスでした。このあたりも勝負のアヤといえば勝負のアヤ。

 

 

ともあれ、総体としてはフランスの快勝となった1戦だったわけですが、この試合のミソはなんといってもジルーの先発でしょう。それにともないベンゼマが左のウイングで起用されることとなりました。まずは、それによって“ジルーvsジュルー(スイスCB)”という夢の対決が実現したことを、デシャンに感謝したい。

 

 

それから、ベンゼマのウイング起用に対する評価は、なかなか微妙なところもあったようですが、個人的には面白かったように思います。なんというか、ジルーが“ニセ9番”になりましたよね。もちろん“ニセ9番”といっても“ゼロトップ”という意味ではなく。ジルーは紛れもないストライカーでした。ここで“ニセ9番”というのは、“ニセ・ポストプレーヤー”という意味ですね。9番を付けたCFが真ん中にいるのだから、一般的にロングボールはここに向かって蹴られる。しかし、この試合では、ほとんどウイングのベンゼマに向かって蹴られていた。CFではなくウイングがターゲットを果たしていたという意味で“もう一つのニセ9番”といえるのではないでしょうか。