この時期になって、こういう地味なカードの試合を見るのもオツ。しかも、それなりに見応えがありました。
■前半
数ヶ月ぶりにみたヴェルディ戦。しばらく見ないうちにシステムが442から3421へと変更されていました。なんかヴェルディって、読売時代から南米流のサッカーを取り入れてきたチームって印象がいまだに強くて、必然的に442のイメージがピタッとくるんですけど、思い出だけでは生きていけないのは、我々もサッカークラブも同じようです。ま、我々といっても、女子に比べて男子はいつまでも思い出に浸って、そこにしがみつきながら生きていく動物なんですけどね。
ともあれ、対する草津のシステムは442。で、361と442だと、机上のフォーメーションボードでいけば、サイドにギャップができる。すなわち、シャドーやボランチがケアするとはいえ、361だと基本的にワイドは1人。対する442(ボックス)は、サイドハーフとサイドバックの2人ずつがワイドの位置を取る。ただ、この試合に関していえば、草津サイドハーフの青木と小林が真ん中寄りのポジショニングをとっていてので、そこまではミスマッチ感はなかったかもしれません。
試合のイニシアチブを握ったのはヴェルディ。この日のヴェルディの攻撃を端的に表現するならば、「年寄りが若手を走らせるサッカー」ということになりましょうか。真ん中ではベテラン勢の平本がボールを収め、中後が展開する。そして、そんなセンターラインから出されるボールを追いかけて、サイドのスペースなどを猛然と、前田とか高木大輔とか安西とか澤井とかが走りまくる、そういうイメージ。前半に関していえば、サイドにおける推進力がヴェルディの攻撃を牽引していました。
対するザスパは、趨勢としては苦しい展開。「ザスパのエースといえば、絶対的に平繁」といった類の評価を耳にしますので、もっともっと期待していたのですが、こと、この試合に限っていえば、ボールを収められなかったですし、ゴール前でのアイデアにも不満を感じる内容。で、それは相方のダニエル・ロビーニョにも共通していたのですが、決定的に異なるポイントがたった一つだけあって、ロビーニョさんは、中盤からのカウンターを1人で運んで、1人で決められてしまう。凄いゴールでしたねぇ。群馬のリードでハーフタイムを迎えます。
■後半
後半になるとヴェルディはメンバーはいじらずに、システムだけ442へと変更してきました。安西を最終ラインに落とし、澤井がボランチ。ニウドがサイドハーフに上がって、高木大輔と左右の関係を作る。おそらくニウドの縦への迫力を攻撃で生かそうという狙いがあったものと推察されます。実際に、後半の最初の15分くらいは、ヴェルディが一方的に攻め立て、その結果、「ポゼッションして攻めるヴェルディvsカウンター狙いのザスパ」という構図が前半以上に鮮明化していきます。
ただ、決まらなかったですね〜、ヴェルディのシュート。ポゼッションからの遅攻には概ねザスパも対応できていましたから、得点の匂いが香るとすれば、ザスパのカウンターに対するカウンター返しの場面だったわけですが、そのカウンターがヴェルディはとにかくヘタだった。一方のザスパは入念にパターン練習が繰り返されているらしく、カウンターでの機能美を発揮していてので、「カウンターの美しさ」という意味において、両チームはとても対照的でした。
といっても、群馬は攻められているわけですから、秋葉監督としても選手交代で打開を図ります。切られたカードは宮崎・加藤・永田。狙いは明解で、中盤より前の運動量をテコ入れすることで、前線の強度を高めようとする交代でしょう。そして、実際に、これらの選手交代によってザスパは息を吹き返し、押し返すことに成功します。そのまま逃げ切ることができれば、「秋葉監督も成長したなぁ」という『日本昔話』を想起させるようなハッピーエンドになったはずなのですが、そうはいかせてもらえない。
ヴェルディも、もちろん交代カードを順次切っていたわけですが、前田に代えて投入された菅嶋が、とにかく持ってなかった。交代直後において、決定機を続けざまに迎えながら、モノにできない。同じように、後半半ばで突然として存在感を発揮しだした安西もまた決定機逸製造マシーンと化す。で、そういうときには、往々にして、ラッキーパンチが決まるもの。オーバーラップをしてきた福井が、1/1の確率(違ったらスイマセン)でシュートを得点に変えてしまい、同点決着となりました。
■日本代表への推薦状
□推薦者
・青木孝太
□推薦理由
後半、運動量が落ちてチームが押し込まれると埋没してしまいましたが、前半の青木は凄かった。まず、ちゃんと守備をする。というかFWでなくMF起用なんで当たり前かもしれませんが、ちゃんと低い位置に戻る。で、低い位置でフィジカルの強さをチームに還元する。また、攻撃においても起点というか、攻守の繋ぎ役として、そのしなやかなボール捌きを遺憾なく発揮する。当然、チャンスではドリブルもするし、シュートも撃つ。
まさにオールラウンドの活躍ぶり。もともとは野洲セクシー軍団のエースですからね、足元の技術は素晴らしいわけですよ。で、J2の舞台で揉まれるなかで逞しさも出てきた。フィジカルの強さで攻守に奮闘し、シュートやキックの技術にも秀でている、となれば、あの人を思い出す。そう、本田圭佑。本田と違って、押し込まれる時間帯に行方不明になってしまうのが玉に瑕ですけど、ハマっている時間帯に限れば、全然、代表にいても遜色ないレベルだと思います。