■ヴィッセル神戸 vs 名古屋グランパス[J1第27節 10月05日]
キックオフ直後に楢崎がバックパスの蹴り出しを枝村にカットされそうになって、決してバタつくはずのない楢崎がバタついたので、名古屋の側からすれば「いったいどうなることやら」っていう暗雲が立ち籠める立ち上がりになったのですが、時間の経過とともに名古屋がペースを握ります。というか、神戸、丁寧にビルドアップしようという意識は良いのですが、FWへのクサビが入るまでの途中にカットされ続けたら厳しいですよね。たまにはアクセントがてら蹴っちゃえば良いのに。
それでも、先制したのは神戸。枝村からのパスを受けた森岡がワンタッチでヒールパス。枝村がちょんと触って走り込んだ相馬がピンポイントクロス。そこに飛び込んだマルキーニョスがエースらしい働きを見せてゴールゲットしました。他方、森岡が起点となった先制点に対し、名古屋の同点弾は田口が起点となったもの。前後の時間帯は名古屋のコーナーキックラッシュだったのですが、何度目かのキックで川又の頭に合わせてみせます。川又のジャンプ力が野生でしたね。
で、前半のロスタイムに、再び田口がアシスト。流れの中でのクロスに永井が頭でねじこみました。それにしても永井、キレキレでした。それ以前の時間帯から、チャンスを演出しまくってましたし。持ち味の加速力が随所に発揮されていて、このゴールも、思いっきりカラダをねじってのもの。直前にはクロスにニアに飛び込むっていう武闘派なプレーもありましたし、相当、コンディションが良いのではないでしょうか。待望の復活ですな。
後半になると、微妙に構図が変わります。意図的にかどうかはわかりませんが、名古屋が神戸の攻撃を“受ける”ようになった。この試合の神戸のは遅攻が目立ちましたから、そういうパスサッカーを守備組織の網の目にかけてから一気にカウンターを繰り出すという狙いがあったものと推察されます。で、実際に、永井の、この日2点目、チームとしての3点目はそういうかたち。自らパスカットして、そのまま独走。増川と岩波を1人でペンペンにして決めきってしまいました。
その後、神戸はスーパーサブ適性を感じさせる石津の投入を皮切りに、攻撃的なカードを次々と切っていく。先発した増川や途中投入の河本といったCBは基本的にはCFになる。最終ラインには岩波が1人。広大なスペースはチョンウヨンと相馬がカバー。システム的には「1225」というか「3043」というか、ともあれスクランブルアタック。スクランブルエッグばりにスクランブルでしたけど、実を結ぶことなく31で名古屋が勝利を収めました。
というわけで、この試合で注目されたのは森岡と田口というアギーレJAPAN新顔対決ですね。年齢もだいたい同じくらいの2人。森岡を初めて見たのは数年前のNACK5スタジアムだったかと思いますが、いくら専スタとはいえ顔までは判別できない。それが、こうやってテレビで見ると、森岡ってヒゲを蓄えていますけど、なんとなくベビーフェイスなんですね。一方の田口は、これまたスタジアムでは見てきましたが、顔を見るのは初めて。沖縄出身者らしい顔立ち。
そんな2人のプレースタイルですが、“パサー”という意味では共通する一方で、仕様は少し違う。森岡は王様ですからね。止まってボールをもらって、抜群のキープ力を駆使してボールをしっかり収める。で、前を振り向いてからキラーパスを出していくスタイル。一方の田口は、自らボールをもらいに行くというか、潤滑油的にボールタッチしていく。ただし、この人は「潤滑油としては目立ちすぎじゃね?」くらいの働きができる選手ですし、そういうときの名古屋は強い。“潤滑油なのに主役”っていう状況を、どうやって安定的に作っていくか、田口の課題はそこかな、なんて思います。