■造船ダービー[横浜FCvs愛媛FC(05月12日)]
横浜市と松山市にダービー的要素はあるだろうかと考えてみたところ、なかなか、ないですよね。港町っちゃ港町ですけど。ただ神奈川県と愛媛県となれば、なんとなく‘造船’というイメージが浮かびます。有名な話ですが、‘みなとみらい’の‘ドックヤードガーデン’は、かつての造船所の作業スペースのフォルムをそのまま再利用したものですし、横須賀とかにも、たぶん造船所はあるでしょう、よく知りませんが。
ちなみに、この日、上星川駅からバスで三ツ沢に向かったのですけど、上星川駅の近辺は保土ヶ谷区らしい。そして保土ヶ谷区には「横浜船員保険病院」があるようで、その看板がバスの車窓から視界に飛び込んできました。そう、コクリコ坂を持ち出すまでもなく、横浜は船乗りが発展させた町。必然的に造船業との縁も深いのです。
一方、愛媛県といえば造船は有名ですよね。これまた有名な話ですけど、昨今、今治の枠を超えて、‘四国の星’になりつつあるご存じ‘バリィさん’。このバリィさんはタオルやしまなみ海道に加えて造船がデザインにあしらわれているんですね。
ちなみに、先日、ニッパツで熊本戦を見たときは、グッズ売り場的な場所に‘くまモン’が来場されていましたけど、この日、バリィさんの姿は確認できませんでした。うん残念。せっかくの造船ダービーに花が添えられず・・・
■講談本ダービー[千葉vs松本(5月19日)]
いろいろ考えたんですけど、千葉と松本ってあんまり共通点は無くないですか? 敢えていうなら、スタジアムが似ていますかね。2万人規模の専用スタジアムってところが。そして、スタジアムから見渡せる風景が地域性に溢れているところも。
アルウィンは、スタジアムに「これぞアルプス!」って光景が飛び込んできますし、フクアリからはいかにも臨海地域のコンビナートって景観が垣間見える。そう、もろもろの環境とかは全くの好対照な両チームなわけです。一方は山に囲まれて精密機械工業(=綺麗な水)が発達した地域。もう一方は海に面して重化学工業(=ドロドロ石油)で首都を支えてきた地域。
そんな両クラブの共通点なんて、そうそうあるわけがない。敢えてあげつらうならば、松本山雅の山雅は喫茶店の名前ですよね。喫茶店といえども一私企業なわけです。そしてジェフ千葉のJEFは「JR EAST FURUKAWA」のイニシャルによって出来ているというのは大人の世界になくてはならない‘公然の秘密’ってシステムですね。そういう意味では、〈実はチーム名がJリーグの理念に反する疑惑ダービー〉と言えなくもないのですが、これだけだと少しパンチに欠ける。
とはいえ、「他には特にないよなぁ・・・」と試合そっちのけで考えていたところ、降りてきましたよ、閃きが。松本といえば信州、信州といえば真田、真田といえば「真田十勇士」ですね。そして千葉といえば房総、房総といえば里見、里見といえば「里見八犬伝」となる。そう、この両クラブの対決は〈昭和初期の講談本ダービー〉と言えるわけです。めでたし、めでたし。
■近代由来都市ダービー[横浜FCvs札幌(6月1日)]
札幌と横浜の共通点をいろいろ考えてみたところ、う〜と、ともに黒船さんがやってきてから都市として成立したところが似ていますかね。江戸時代の北海道は渡島半島を除いて、‘アイヌ的都市’は存在したかもしれませんが、我々がイメージする‘都市’って感じじゃなかったでしょうし、横浜はまるで耕地に向かない土地で、蘆原が広がっていたとかいないとか。
その分、近代になって以降、税金をたんまりと垂れ流した開発が設計図通りに進められ、いわゆる‘近代遺産’の薫りが香ばしいオシャレ(無機質)タウンが表面的には作り上げられたんですけどね。その結晶が神奈川県庁であり旧北海道庁。そういう意味では、この試合は〈都道府県庁のレンガが観光資源ダービー〉といえるわけです。
ただ、あくまでオシャレ(無機質)なのは表面に過ぎず。「汚いものを排除すれば幸せになれる」という盲信に取り憑かれた現代人と違って、かつての日本人は、「人間にとっての居心地の良さとは何か?」ってことを、よく心得ていた。そう、都市には、というか人間社会には‘汚い部分’が不可欠なのですね。簡単に言ってしまうと「風俗産業のない都市は、人間が集まるコミュニティーとして片手落ち」なのですよ。
そして、近代横浜と近代札幌を作り上げた先人達は、そのことをよく知っていた。そうですね、両都市とも、‘ススキノ’‘伊勢佐木町’という歓楽街を抱えているです。尤も、後者の近況を見る限り、横浜は片手落ち都市に近づいているように感じられなくもないですが。