※本シリーズは、まぁ、【御蔵出し】みたいなものです。当時のリアルタイムで書いたものなので、そういうものとしてお読みください。。。
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■オマーン 1 vs 2 日本[2012年11月14日]
先制点は日本。オーバーラップした長友がダイレクトでクロス。相手ディフェンダーが上手く足に当たらず、ヘンテコな転がり方をしたら、ものすごく日本にとって好都合なシチュエーションが発生し、そこに詰めた清武が抜け目なく決めてくれました。
その後は川島のスーパーセーブや、「攻められ慣れ」などで、オマーンの鋭利な刃をのらりくらりと交わしつつ、さらには酒井高徳の投入でバランスを改善するなどして、「このまま勝ちきるのかな」という緩んだ空気が流れ出した後半30分過ぎ、まんまとフリーキックを決められ、同点に追いつかれてしまいます。
勢いづいたオマーンは更に猛攻を仕掛けてきましたが、最後の最後で日本が底力を見せてくれました。途中出場の酒井高徳がサイドを攻略し、そのクロスに反応したのは、細貝の投入で一列上がった遠藤。その、こぼれ球を、やはり選手交代に伴うポジションチェンジで右サイドにスライドしていた岡崎が押し込んで、決勝点を挙げました。ザックは後半になって、選手交代のたびに目まぐるしくポジションをいじっていましたが、それが全て見事なまでに的中するんですから、やはりイタリア仕込み。ダテに納豆スパゲティとか明太ピザを食べて育ってはいませんね。
この試合、前半の日本は正直、かなり出来が悪かった。ほとんど相手を崩せず、それでいてオマーンの速い攻撃に何度も危険なシーンを迎えました。その要因は幾つかあるのでしょうけど、なかなか本田と前田のところにクサビのパスが入らなかったというのが、大きな理由なのかなと思います。
名波さんが指摘していたように、ロシアという極北の国から35℃の中東に移動してきた本田が今ひとつ動きに精細を欠いていた。ならば前田が受ければ良いんでしょうけど、前田も「縦の深みを作る」ことを最優先タスクとしている以上、そうそう低い位置にまでは下りてこれない。
で、ボランチも消えていることが多かったので、必然的に、最終ラインから一発のパスで清武・岡崎という両WGにボールを届けようという攻撃が増えます。しかし、そこにはルグエンが敷いたブロックが頑丈に築かれている、と。
こういうときこそ遠藤の「淡々とした」が必要になってくるのですが、どういうわけだが、この試合の遠藤は空回りしまくっていました。おそらくオマーンのブロックを崩そうとしていたのでしょうが、やたらと広範囲に動き回って、相手守備陣に突っ込んでいくんですが、逆に、密集地帯の中で埋没してしまっていた。長谷部も全体のバランスを取るのに精一杯という感じで、ゲームメイクする選手が中盤からいなくなってしまいました。
後半に入ってザックの指示があったのか、自分たちで判断したのか、遠藤が低い位置に残って、長谷部が高い位置に進入していくってシーンが増えましたが、そういうときに良いシーンを作り出せていたと思います。ボランチの攻撃力のある方が低い位置でゲームメイクに専念しすることで、結果的にチームが攻撃的になるって逆説が、ときおり発生しますが、この試合は、まさにそういう感じだったと思います。
そういう意味では前半の遠藤は、このゲームのツボを押さえられていなかったことになります。「試合の流れを支配する」という技術は本田や中田英さえも軽く凌駕するであろう遠藤ですが、こういうこともあるんですね。空海さんでも時にはヘタクソな字を書いてしまうという伝承は本当だったらしい。