サポーターのスタンスの周辺をウロウロと…2012年シーズンのJリーグを振り返る・スタンドの住人達

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■大分ホームの国立決戦[千葉vs大分(11月23日)]

かつての入れ替え戦と同様に、Jリーグ当局にはニンマリが止まらないくらいの盛り上がりを見せたJ1昇格プレーオフ。けっこうシッカリと雨が降ったにもかかわらず、3万人近いサポーターが国立に駆けつけました。ただし、よくよく観察すると、動員率には若干の差がありましたね。当たり前の話ですが、トリニータのゴール裏よりも、ジェフのゴール裏の方が、圧倒的に人口密度が高かった。ジェフサポの方がたくさんスタジアムに足を運んでいた、ということです。

仕方ないですよね。総武線一本でSuicaをピッとやって、もう一回ピッとすれば到着する人たちと、飛行機を手配して数万単位の出費を覚悟しなければならない人たちとでは、これくらいの差はつきます。

もちろん、こういう現象は天皇杯でもナビスコの決勝なんかでも起きることですが、‘国民的関心事’である天皇杯決勝とかと違って、基本的に駆けつけるのは各クラブのサポーターであり、かつ、進出が決まってから多少のインターバルがあり、相応の準備が可能なナビスコ決勝とも事情が異なる。〈日曜日に進出が決まっての金曜日に行われる〉ってレギュレーションだと、どうしても、遠隔地のクラブは事実上のアウェイ状態になるわけで。しかも、何の因果か、この試合は大分のホーム扱い。

いろいろな構造的に、どうしてもこういう形にならざるをえないってのは、重々承知なのですが、やはり、どこか釈然としない。不公平感を否めない。野暮な疑問ではありますが、「君ぃ、‘ホーム’って何だね?‘中立地開催’って何だね?」と、誰かに尋ねてみたいところです。

■良心的なサポーター[ジェフ千葉vsロアッソ熊本(05月20日)]

千葉のJクラブで、サポーターの個性といえば、柏レイソルが思い浮かびますが、厳密には、思い浮かびましたが、実は、ジェフのサポーターというのも、良い意味で「中庸」という感じで、いろいろと好感が持てました。

まず、キックオフの少し前に、ゴール裏からメインスタンドなりバックスタンドなりに、「一緒に戦いましょう」的な呼びかけを行っていて、こういう呼びかけを行うこと自体は特別に珍しいことでもないんですが、その呼びかけのやり方が非常に礼儀正しい。

ゴール裏にいると、どうしても「お前ら、いまから合戦だぜ!ものども、ワシに付いてまいれ!!」みたいなテンションになって、実際に、そこでは、そういうスタンスがリーダーに求められているんだと想像されますが、バックスタンドやメインスタンドにいるサポーターというのは、ハッキリ言ってしまうと、そういう「熱過ぎる」ノリについていけない、いわゆる「落ち着いた大人」的な人々が多数派を占めるわけですね。

だから、ゴール裏的なノリを極力自制することが、逆説的ですが、バックスタンドやメインスタンドを「こっち側」に引き入れる近道になります。どこのクラブかは申しませんが、とある西日本のJ2クラブがアウェイで応援している、その真横で試合を観戦したことがありました。

そこのコールリーダーさんは、とても熱い人で、遠路はるばる大変ご足労さまではあるのですが、如何せん、周囲=〈飛んだり跳ねたりをする人々の‘外周部’で着席応援をしているサポーター〉に対して、かなり威圧的なスタンスで「お前らも一緒に応援しようぜ!」と呼びかけていました。これではサポーターは絶対に増えません。そう考えると、ジェフのゴール裏のコールリーダー(執行部)は、非常に適切な立ち居振る舞いを見せているんじゃないかな、と好感を持ちました。

ヴェルディの変容[東京VvsFC岐阜(06月13日)]

ヴェルディといえば、良くも悪くも、読売クラブ時代以来、「南米スタイル」を自認してきたクラブですね。それは、サッカーのスタイルだけに止まらず、他の多くの部分でも看取できたものです。

例えば、今でこそ、キックオフ前の選手紹介で、ホームチームとアウェイチームの扱いに極端な差を設けるってのは一般的なあり方になりましたが、Jリーグが創設されて暫くは、少なくとも20世紀段階では、そこまで露骨ではなかった。そういうなかで、いち早くアウェイチームの選手を息継ぎなしの超早口で読み上げるようになったのがヴェルディでした。南米流なのか、欧州流なのかは存じませんが、いかにも「本場かぶれ」なところが、なんともヴェルディらしかった。

ところが、ですよ、読売が経営から身を退き、Jリーグ本部からの刺客が社長として送り込まれると、フィールド外での、過度な南米かたぎは放棄したらしい。

まず、試合開始前のアナウンスで、「FC岐阜サポーターのみなさん、遠いところ、ようこそいらっしゃいました」なんて、まるで老舗の温泉旅館みたいなことをやりはじめる。さらにスタンド、少なくともバックスタンドでは、FC岐阜の選手紹介に際し、井上平服部年宏など、かつてヴェルディに所属していた選手に対して、ブーイングではなく、拍手なんてものを送り出す。

これじゃ、まるで、どこぞの川崎フロンターレじゃないか。こんな、「日本流おもてなしの心で対応させていただきます」で良いのか、ヴェルディ。やはり、そこは、なんでもかんでも、良いも悪いも関係なく、本場にかぶれることを以て尊しとなしてこその読売的DNAってもの。

・・・なんて言ってられない経営状況になったってことですかね。。。