まぁ、風が吹いていたのですよ。この週末は。いわゆる荒天。晴れてはいるものの、風がビュンビュン吹いていて、ところどころに雨雲も残っていましたから、青空なのに、大粒の雨が突発的に数秒だけ落ちてきたり。こういう天候のことを、ワタクシが育った地域では‘キツネの嫁入り’と呼んでいましたが、これって全国共通なんでしょうか。口承ゆえに地域性がハッキリ出たりしそうですけど。
ともあれ、そういう条件ですから、コイントスに勝ったらしき横浜FCは、サイドをチェンジして、風上に陣取ります(注:どうやら熊本が風下を選んだらしい)。当然、前半は横浜FCが優位に試合を進めるはずなのですが、どういうわけだか、全く攻撃の形を作れません。その理由として、1つには、審判との相性という問題がありました。ただ、これを言っても始まらない。より根本的には、熊本のパス回しの方が丁寧で、逆に横浜FCは、ことごとくパスがズレてしまっていたところにあるでしょう。
熊本はベテラン軍団らしく、‘こなれた’サッカーをしていました。熊本を牽引している存在として、まず挙げられるのはレイソルトリオですね。この試合では南選手と蔵川選手が先発。前半のうちに斎藤選手が負傷退場したことで、北嶋選手も早い時間帯から出場。チームを引き締めていました。この三人の中で特筆すべきは南選手のゴールキックですかね。風下だった前半、一生懸命に高く高くボールを蹴り上げるんですけど、強風の中、高いボールを蹴るとどうなるか、賢明な読者諸氏には、説明せずとも伝わるかと存じます。
熊本を牽引する、もう1人のベテランが藤本主税選手。前半は近いサイドにいましたので、よくコーチングが聞こえてきました。非常に甲高い声で、ファビオ選手あたりに、「走れ!」とか「プレスに行け!」とか指示を出していましたし、後半には、疲労が蓄積した状態で積極的にシュートを撃った仲間選手に「グッジョブ!」的な声掛けをしているのが確認できました。こういうリーダーがいると心強い。
後半に入っても、さほど試合は大きく動きません。ただ、興味深かったのが、両チームのサイドバック。プレースタイル的に好対照だったんですね。熊本の両SBは片山と蔵川。言わずとしれた職人的サイドプレーヤーですね。サイドでの上下動、オーバーラップからのクロス、SHのフォローアップ、どれを取ってもソツがない。熊本の攻撃は、この両SBを巧みに絡めつつ、〈サイドを崩して、クロスを入れる〉という常套手段で進められました。
一方の横浜FCは野上と西嶋というSBコンビ。両者とも、典型的なSBというよりも、「場合によってはCBとしても対応できますよ!」というタイプです。だから、SBとSHのコンビネーションからサイドを崩すというシーンは非常に少なかった。むしろ、5人で攻めて、5人で守るみたいに、前線と最終ラインがぶったぎられていたような印象すらあります。また、右SHの武岡選手もサイドに張っている感じの選手ではありませんから、横浜FCのサイドアタックは、ほぼ小野瀬選手の単独突破に限られていたといって良いでしょう。
しかも横浜FCの山口監督は後半途中に左SBの西嶋を下げて田原選手を投入。4141から3142というか3322というか、そういう感じに配置転換します。このことで前線に起点が増えたことは間違いないのですが、中央突破偏重傾向に拍車がかかり、バランスはむしろ悪化したのではないかと感じられました。守備は安定しており、養父選手を投入しギアを上げた熊本の攻撃にも対応し、ただただブロックの外周上でパスをこねくり回すって状態に追い込むことで完封に成功しましたが、攻撃については、もう少し整備する必要がありそうです。
□日本代表への推薦状
・推薦者
仲間隼人
・推薦理由
仲間隼人って、よく考えれば凄い名前ですよね。仲間とか‘仲’という漢字を使う名字は専ら沖縄に多いのですが、いまから400年ちょっと前、その沖縄界隈に侵略し、武力併合してしまったのが、当時の島津藩。島津藩の拠点は、今の鹿児島県で、古代の地域通称であり、そこの武士の別称として旧国名にひきつけて流布した言葉が‘薩摩隼人’ですね。つまり、いかにも沖縄出身者っぽい名字をしながら、その沖縄を征服した人々の通称を名前に持っているわけですよ。なんたる矛盾。
ただ、ロアッソは、そういう矛盾が好きなのかもしれません。だって、胸スポンサーは「武者がえし」で一躍名を馳せた酒造業者さんで、背中が再春館製薬。もちろん程度の問題ですけど、一般的にアルコールは健康に良くないと考えるならば、「「しろ」を飲んで痛めた肝臓を、再春館製薬のお薬で治しましょう!」というメッセージが隠されているとしか思えない。これまた矛盾。いや、もはや禅の境地なのでしょう。そういう禅の境地って、日本を代表するのになんとも相応しいじゃないですか。