日テレにお手上げとなりつつ、女子のほうはちゃんと分析してみる【高校選手権男女決勝】の周辺をウロウロと…★テレビ観戦記★

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■京都橘 2 vs 2 鵬翔[男子決勝 01月19日]

先制点は40分。コーナーキック崩れからのルーズボールを京都橘の中野君がシュート。それは思いっきり当たり損ねて、鵬翔12番松永君が頭でクリア。そのクリアが小さくなったところに走り込んだ京都橘DFの林君が押さえの利いたダイレクトミドルを蹴り込みます。鵬翔GK浅田君も反応しましたが、結局はゴールラインを割ってしまいました。

対する鵬翔は、一撃必殺のセットプレー。左からのコーナーキックからCB芳川君が問答無用のヘディングシュート。尤も、京都橘としては「あれをやられちゃ仕方ない」と、割り切れて、あまり引きずるような感じではなかったのかもしれません。

実際、後半19分に京都橘は勝ち越します。この得点は美しかったですね。中盤に下りてきた小屋松君が変態トラップで見事にボールをコントロールをすると、中野君とワンツー。中野君のワンタッチのスルーパスがこれまた変態的。すり抜けた小屋松君がクロスを入れると、相棒の仙頭君が飛び込んで合わせました。「練習した成果が出たぜ!」って形のゴールでした。

しかし、鵬翔は諦めません。というか、この大会、鵬翔はずっと「先制されて追いついて、勝ち越されても追いついて、なんやかんやで勝ってしまう」って勝ち上がり方でしたからね。左SB日高君の切れ味鋭いドリブル突破でPKを獲得。そのPKを鵬翔キャプテンの矢野君が思いっきり蹴り込んで、土壇場(の少し前)で再び同点に追いつき、延長戦に持ち込みました。で、試合はPKへ。例によってPK戦については触れません。公式記録は引き分けでございます。

というわけで、試合内容は素晴らしかったのですが、ホント、この中継スタイルだけはなんとかならないのかと。確かにアクシンデタルな形で決勝戦が延期になって、十全な放送枠を確保できなかったのはしかたないのかもしれません。電通様の御意向には逆らえないのが世の常。博報堂かもしれませんけど。

それにしても

試合中に平気でCM 試合を平気で編集してカットする というか、そもそも録画

全く以て「どうにかならんのかね、○○君。」とこぼしたくなるってもんです。

しかも、まぁ、大人の事情とはそういうもんですから、しょーがないっちゃしょーもないんですけど、この100分の放送枠による継ぎ接ぎ中継は、日テレだけでなく全国43放送局にも適用されてしまっているらしい。つまり、日テレが「90分+延長+PK」の映像を作って、各ローカル放送局が、それぞれの事情(確保できる放送時間)に応じて編集するのではなく、「90分+延長+PKをムリヤリ100分(からCMを引いた時間)に編集したテープ」が各ローカル局に配信されるらしい。

43ローカル局の全てがそうだったかは存じ上げませんが、少なくとも我らが千葉テレビ(なぜか映る)は、100分の放送時間でした、ウチのビエラが提示する番組表を見る限り。「うん、なんだかなぁ」と阿藤海ばりに嘆息するよりしかたありません。

要するに、放送体制など取り囲む大人達の価値観が、普段ワタクシが馴染んでいるサッカーの試合とは根本的に違う。付随する「しがらみ」「大人の事情」が、FIFA的なサッカーとは180度異なるということであって、詮ずるところ、同じサッカーと言っても、FIFAを頂点とする秩序に位置づけられる代表戦やJリーグなど各国リーグと違って、高校サッカーは「甲子園のサッカー版」であって、ごくごくドメスティックなコンテンツだということなのでしょう。「サッカー」というジャンルではなく、「高体連」というジャンルの球技だと思って納得するしかないのかもしれません。

常磐木学園 2 vs 0 神村学園[女子決勝 01月17日]

電光石火。20番の川崎選手がダイレクトにスルーパスを出すと、反応した道上が強烈なシュート。これは何とかキーパーが防ぐものの、こぼれたところに14番の白木選手が詰めて、常磐木学園が開始1分で先制ゴールを奪いました。

後半に入ると、神村の支配率が上がります。ただ、準決勝もそうでしたけど、常磐木ってカウンター型のチームですよね。なので、神村の支配率が上がることは、それほど大きな問題ではなかった模様。実際に、白井の見事なポストプレーから堀井が決めて、追加点を挙げましたし。

神村も美談に近いような選手交代で火事場のナントカ力の発動を目論みますが、「熱投甲子園」的なドキュメントコーナーで監督ご本人が語っていたように、勝利至上主義に徹するという選択肢を必ずしも潔しとしないスタンスのチームに常勝軍団相手を向こうに回して2点をひっくり返すというタスクは、聊か荷が重かったようで、そのまま常磐木が貫禄を見せつけました。

この試合はフルタイムでノーカット中継されましたので、試合内容の分析をば。両チームの展開するサッカーを比較すると〈洗練された常磐木学園と愚直な神村学園〉といった感じだったでしょうか。常磐木学園には試合の進め方にメリハリがありました。

常磐木は基本的に両SHがライン際で張っている。虎視眈々とドリブルを仕掛けるチャンスを窺いつつ、あまり真ん中には寄っていかない。で、中盤がワンタッチのパスを何本か交換して、良い状況を作り出すと、後ろ姿がアユ似の堀井選手あたりがゴリゴリの推進力を発揮させる。ちなみアユ似というのは、バックダンサーとあれこれあった人ではなく、ヤングなでしこで6番を付けていた選手のことです。ウォーキングドリーム的な。

しかも常磐木は、エースの道上を過度に疲弊させない。「なんでもかんでも道上に託す」みたいなことはしないわけですね。そこが神村と対照的でした。神村は、まさに「神様仏様布志木様」といった感じで、攻撃は、ほぼ大黒柱の布志木選手頼み。

布志木選手と道上選手は、かなり共通するところがあって、共にサイズに恵まれていて、フィジカルを生かしたキープ力と、それでいて柔軟な足技を併せ持つプレーヤーなんですが、決定的に違うところもある。プレーエリアといい与えられたタスクといい道上はベンゼマに近いのに対し、布志木は大柄な司令塔。つまりジダンみたいなプレーをします。

そして、崩壊期のフランス代表がそうであったように、神村学園も過度な布志木依存があって、全ての攻撃が布志木を経由する。しかし、トップ下の選手を経由するということは、それだけ縦への速さが出てきづらい、ということですし、抑えどころも明確になってしまう。布志木は随所にスペシャルなプレーを見せましたが、その割には決定的な仕事はさせてもらえなかった。ある意味、常磐木の掌中で躍らされていたと言っても過言ではなかったように思います。王者常磐木が総合力で一枚上手でした。