■FC東京 6 vs 2 仙台[J1リーグ 12月01日]
あれだけショートパスを交換し続けても点が入らなかった今シーズンのFC東京。それが高橋からの縦一本に反応したルーカスのシュートで簡単に先制できてしまうのですから、皮肉というかなんというか、‘これぞサッカー’としか言いようがないシーズン最終戦の幕開け。
2点目は美しい形。スローインを受けた渡邉千真がルーカスに戻すと、まず梶山と、次に長谷川でありアーリアであり、それでいてジャスールである人と、続けざまにルーカスがワンツー。相手の守備陣を翻弄しまくってから華麗に流し込むという、ポポさんが理想としているであろうスタイルのゴールでしたね。
仙台も黙ってはいません。太田がサイドのスペースにパスを出すと、そこにウィルソンが走り込む。その折り返しに赤嶺が合わせて1点差に追い上げます。ニアを取る動きなどはワンタッチゴーラー赤嶺の真骨頂。FC東京にしてみれば、いわゆる一つの‘恩返し’を頂戴することになりました。
というわけで、前半だけ見れば一進一退の熱戦だったわけですが、後半になると、ゲームのバランスは崩れます。そのきっかけとなったのが、コーナーキックをチャンがヘディングで叩き込んだFC東京の3点目で、これ以降はFC東京のワンサイドゲームとなります。
趨勢は圧倒的にFC東京。梶山とジャスールの〈今シーズン序盤の好調を支えたセントラルハーフ〉によるコンビプレーで相手を崩し、さらにそこにアーリアと千真の〈去年までマリノスにいました〉的コンビプレーが発動され、4点目。
その後しばらくは得点が動きませんでしたが、残り10分を切ったところからスコアは激動。途中出場の平山を起点としたカウンターに石川が絡み、最後はネマと梶山の美しすぎるコンビネーションで5点目を挙げます。どこぞの市議会議員もビックリなくらいの美しすぎ加減でしたね。
そして、それに気を良くしたのか、ネマこと、ネマニャブチチェビッチがダメダメ押し押しの6点目もゲット。ダンディ坂野もビックリなくらいのゲットは、ジダンもビックリなくらいのマルセイユルーレットをGKの真ん前で披露するというオマケつき。
仙台も一応、ロスタイムが4分を過ぎてから、武藤が意地の一発をお返ししますが、‘焼け石に水’とは、まさにこのこと。思いの外ケチャップが出過ぎて、えらい味の濃いチキンライスやらオムライスを食べさせられた感じの試合となりました。
というわけで、三角形かっけー君のコメントで一躍、有名になった「ケチャップがドピュッ!」(正しくは‘ドバドバ’あるいは‘ドバッ’)という使い回しなのですが、ヨーロッパではしばしば使用される表現らしい。あっちのケチャップはチューブではなく瓶詰めだから、どうとかこうとか。
ただ、日本の高性能チューブでも、マヨネーズとかに比べるとケチャップって、出がスムーズでないですからね。主に使い切る直前なんかは、思った以上に大量に出てしまって、チキンライスやらオムライスを味付けるのに、微調整が上手くいかなかったりします。
ただ、とはいえ、その辺のムラを極限まで減らすといった‘芸の細かさ’あるいは‘オタク的こだわり’という部分では日本企業の執着心って異常ですからね。カゴメあたりの社長さんは「うちのチューブをHEINZくんだりと一緒にされちゃ困るよ!」とか激怒していないか心配で心配でなりません。
■スペイン 1 vs 1 フランス[ワールドカップ欧州予選 10月17日]
ジャブを撃ち続けると相手のガードが下がって、本人的はそれほど得意としていないフックが決まってしまうって感じですかね。コーナーキックからスペインが先制します。セルヒオラモスが頭を抱えていると、なぜか目の前にボールが転がってきて、とりあえず蹴ったら入った、みたいなゴールでした。
で、「そのままスペインが勝利!」ってことになるのかな、と思っていたら、後半は一転、フランスのペース。前半に比べて随分とたくさんの人数が攻撃に参加するようになり、スペインを追い詰め始めます。若干、スペインにも油断があったのかもしれませんが。
ただ、それでものらりくらりとスペインがいなしきりそうな展開になります。しかし、最後の最後にドラマは待っていて、後半も目安とされたロスタイムの3分を過ぎてから、フランスが同点ゴールを叩き込みます。相手のクリアミスが神様のイタズラでフランスボールになると、それをリベリーが持ち込みクロス。ジルーが上手く頭で合わせました。
この試合はフランスを尺度にスペインの力を観察してくれてやろうではないか、という感じで視聴しました。なんといっても、フランスは日本を支配率で圧倒した国ですからね。さしものスペインも、さすがに大苦戦するに違いない、と予想しておりました。
改めて説明するまでもなくフランスが苦しめた日本という国は、オリンピックでベスト4に入っても、多くの‘代表ファン’から「監督がダメだから惨敗した」なんて非難を受けてしまう、いわば世界のベスト4くらいでは誰も満足しないサッカー超大国ですから、その日本に勝ったフランスにスペインは、どれくらいできるのか、と。
しかし、そのサッカー超大国を圧倒してみせたフランス相手でも、少なくとも前半のスペインは、これまで磨き上げてきたパスサッカーで、圧倒的にポゼッションしてみせた。もはやスペインのバルササッカーは相手に関係なく発動できるらしい。
バルサの試合を見ていても、この日のようにスペイン代表のサッカーを見ていても、いつも同じ光景が繰り広げられます。気がつけばスペインボールになっており、気がつけば相手陣内で人数を掛けてピタッピタッとパスが繋がっていく。
その寸分違わぬ再生産ぶりが、もはやえげつない。スイスとか長野県諏訪地方で生産された時計かってくらい正確に同じものが繰り返される。支配率といい、パスの繋がり具合といい、トラップとターン(ボールの置き方)の完璧さといい。
もはや、これは日本が誇るスーパーお茶の間ドラマ『水戸黄門』の域に達しているといって過言でない。大いなるワンパターンというか、余りにも、いっつもいっつも同じすぎて却って退屈の領域にさえ到達しつつありますからね。
監督がアラゴネスからデルボスケに代わっても何ら影響はありません。黄門様が東野英治郎から西村晃になっても『水戸黄門』の‘国民的’加減に変化がなかったように。ただ、由美かおるから雛形あきこへの転換が上手くいかなかったように、シャビ・イニエスタからマタへの世代交代に失敗する可能性はなくもないですが。