喧噪も幕を下ろし、静まる街を背に星を数えつつ、今回も多くのブロガーさん達が次のWCなり五輪まで冬眠されたり、そのまま自然消滅してしまうんだろうなぁなどと考えている今日この頃、皆様におきましては如何お過ごしでしょうか?
ワタクシは別館4thDayMarketCentreを更新しております。
富山は後半になっても余り改善されなかった、とかなんとか言っちゃって東京Vvs富山(08月05日)その4
この日のヴェルディは学徒動員だった、とかなんとか言っちゃって東京Vvs富山(08月05日)その5
後半のヴェルディはなんだかんだで盤石だった、とかなんとか言っちゃって東京Vvs富山(08月05日)その6
今回取り上げる2試合は、結果を知ってから見たのですね。ついでに言えば、それに対するスポナビプラスブログの反応・批評も目にした後でした。
なので、いつもとは違った視点で観戦しようかな、と。
まず、ワタクシの持論として、というか、「そんなもん、みんな知っとるわ!」ってことかもしれませんが、ともあれ、「対象物の欠点、不足点なんて誰にでも分かるし、感情論の延長でも指摘できる。しかし、長所については、冷静かつ分析的に観察しないことには難しい」という基本公式があると思うのですよ。
ってことは「長所を指摘できれば〈冷静かつ分析的なブログ〉ぶれるんじゃなかろうか」と、とても安直で、小賢しいことを思いついたりなんとかしちゃったりしなかったりしてですね。
加えて、「最後の1戦とか2戦で受けた直近の印象を、関塚Japan(+なでしこJapan)トータルの評価に置き換えるのはフェアではない」という、ごくごく初歩的な、人として守るべき当たり前のマナーを逸脱したくないってのもありまして。
というわけで、「決勝のアメリカ戦、あるいは3決の韓国戦という、負けた試合からでも垣間見られた、オリンピック6試合を通じて顕著だった良いところ」を、探し出していこうかな、なんて思います。
■なでしこ 1 vs 2 アメリカ女子代表[ロンドンオリンピック2012 サッカー女子決勝 08月10日]
□近賀のイメチェン
試合内容は他のブログさんにお任せ。で、「負けた試合からでも垣間見られた、オリンピック6試合を通じて顕著だった良いところ」についてですが、近賀選手のプレースタイルが若干、変わったでしょうか?
ワタクシがこれまでの見た試合では、ダニエウ・アウベスみたく、ほとんどSBという名のWGって感じというか、タイミング良く上がっていくと言うよりも、ずっと前で待ち構えているって雰囲気があったのですが、この大会では、なでしこが全体として中盤でのキープ力を欠いていたってこともあるんでしょうけど、ロベカルっぽいというか、タイミング良くスルスルスルと上がっていくオーバーラップを繰り返すようになったという印象を強く持ちました。自らが攻撃を牽引するというよりも、あくまでフォローアップに徹するといいましょうか。
この試合でも「近賀も上がってきた」というアナウンスはよく聴かれましたが、「近賀も上がっている」という表現をアナさんが用いることは、ほとんどなかったと思います。
もちろん、その変化には良いところも悪いところもあるんでしょうけど、バランスであったり、スタミナであったりという部分への心配を周囲にかけないという意味では、「より円熟味を増した」と、ポジティブに評価して良いでしょうし、少し不安定だった左の鮫ちゃんに比べて、攻守に渡って非常に安定感というか重厚感があったと思います。
□左サイドのコンビネーション
鮫ちゃんといえば、今回の大野川澄鮫島という左サイドトリオも悪くなかったのかな、と。実際に、この試合でも決定機は、ほとんど左サイドの崩しから作られていますし、例の、ハンド疑惑もある宮間のフリーキックも左サイドでしたよね。
鮫ちゃん個人としては守備力的に狙われる試合が多かったですし、川澄ちゃんについても得点は初戦だけ。それでも、この2人の関係、コンビネーションは非常にスムーズだったと思います。特に、川澄ちゃんはスペースを与えてもらえない展開ばかりだったという条件を加味すれば、守備の助太刀に、攻撃におけるチャンスメークにと、地味ながらも、かなり利いていたと思います。
なによりも、大野が躍動していた。そして大野が迎えた決定機のほとんどは、この試合においても、それ以外の試合においても川澄ちゃんによって演出されたものです。このINACコンビ、川澄ブログを見る限り、それほどプライベートでも仲良しって感じではなさそうですけど、プレーのフィーリングは非常にマッチするんでしょうかね。
□大儀見の本格化
最後に大儀見。「デンと構えて、キープが出来て、シュートにも積極的。つまり、居るべきところに居る」ってCFは、近年、男子だとなかなかお目にかかれないのですが、女子において、そういう古式ゆかしき正統派CF、エースFWが、いよいよ本格化したことは喜ばしい出来事でしょう。この試合でもPA内で何度もシュートモーションに入り、実際にゴールも上げましたし、バー直撃とかのシーンもありました。
■日本 0 vs 2 韓国[ロンドンオリンピック サッカー男子・3位決定戦 08月11日]
□鈴木大輔の守備類型
パクチュヨンの先制点でも、クジャチョルの追加点においても、結果として振り切られる形となった鈴木大輔。この試合に関しては苦汁を舐めた鈴木ですが、この失点の在り方は、彼の良さを逆に象徴していると思われます。
2失点ともにスーパーな対応が出来なかったことから解るように、彼は1対1の対人守備においてスペシャルな働きの出来る選手ではない(らしい、このレベルでは)。逆に、その(現時点における)限界(=短所)を冷静に分析できているようで、彼は、このオリンピックを通じて、再三再四、ゴール前で壁に成り続けた。PA内でのポジショニングが抜群に良かったですね。前に飛び込む吉田と、じっくりコースを消す鈴木という組み合わせによるCBコンビは、芸術的なハーモニーを醸し出しておりました。
□山口と扇原
パクチュヨンの先制点において、もう1人ペンペンにされたのが山口。ただ、この選手は、このオリンピックにおけるMVPと言って良いのではないでしょうか。守備ではDFよりも深い位置までカバーリングに入り、攻撃では機を見て自らシュートを撃つシーンを作り出す。その状況判断が非常に的確。そして早い。シンプルで的確な判断を即座にできる山口が、このチームをオーガナイズしていたんだと思います。
また、相棒の扇原ですが、セレッソでのスタイルはよく判りませんが、このチームで彼は、当初、高い位置で攻撃をフォローアップするとか、短いクサビの縦パスを連発するとか、そういう働きは余り出来ていなかった。試合中に消えてしまう時間も少なくなかった。しかし、イギリスの地で試合を重ねるごとに消える時間は減り、この試合では積極的に高い位置取りができていました。この試合に限れば、むしろ最終ラインに下りて、のらりくらりとしたゲームメイクが必要だったのかもしれませんが、「ゴールから逆算して3本前」のプレーだけでなく、「2本前」の働きを国際舞台でも安定的に繰り出せるようになったのは、彼にとって、成長でしょう。
□清武と東
1トップが永井だったり大津だったりしたがゆえに、ポストプレーヤーが不在だったこのチーム。「おそらく3位決定戦で韓国に当たるだろう。そして、そのとき韓国はロングボールで来るだろう」ってことを予想して五輪準備なんて出来ませんから、グループリーグ突破からの逆算としては適切なチーム作りだったわけですが、とにかくポストプレーヤーが不在だった。その中、中央でクサビを受ける当番として活躍したのが東。追加点を奪われた直前に、大津が躓きながらシュートだかパスだかを折り返したシーン、あのとき、その起点となったのは東のポストワークでした。
そして、静の東に対して、運動量豊富に奮闘していたのが、動の清武。おそらくキャラ的にも、また関塚監督の見取り図的にも、チームメイトの評価的にも、清武は「リーダー」とか「大黒柱」とか「エース」とかっていうタイプではなかった思います。「攻撃面でのキーマン(=一番手)」ではあったかもしれませんが。にもかかわらず、マスコミをはじめ我々サポーター、日本国民が、彼を「大黒柱」に仕立て上げてしまった。
そして彼はオリンピックを通じて、その押しつけられた必然性のない役割を必死に引き受けていた。ワタクシの色眼鏡かもしれませんが、彼のプレーからは使命感とか責任感が常に伝わってきた。それは、この試合でも全く変わりません。彼のことを人として最大限にリスペクトしたいと思います。
□関塚さん
一言だけ。「WCや五輪や代表しか見ない人たちは無い物ねだり的な批判を垂れるのかもしれませんが、Jリーグのスタンドの住人は、あなたがJリーグ代表として素晴らしい成果を収めてくれたことを、みんな(じゃないかもしれないけど)、誇りに思っております!」