スペインsイタリアとフランスvsイングランドの周辺をウロウロと…【ユーロ観戦記】

                                  にほんブログ村 サッカーブログへ
にほんブログ村

気がつけば仙台が首位を快走し前評判通りには行かないJリーグの喧噪を横目に、上位チームが順当に勝ち進めているユーロがいよいよ佳境へと向かいだした今日この頃、皆様におきましては如何お過ごしでしょうか?

ワタクシは別館4thDayMarketCentreをアップしております。

審判批判をシャットアウトすることは日本の文化である、とかなんとか言っちゃって。

澤穂希遠藤保仁って似てませんか?とかなんとか言っちゃって。

ロンドン五輪OA枠の使い方はあれでよいのではないか、とかなんとか言っちゃって。

■スペイン 1 vs 1 イタリア[06月10日 EURO2012]

まさに実力伯仲、拮抗した静かながら熱い1戦を動かしたのはピルロディナターレ。例によって宮間ばりに、ワンタッチの一発スーパーパスを繰り出し続けていたピルロが、突如としてドリブルを開始。スペイン守備陣が一瞬あっけにとられているうちにスルーパスを出し、そこに反応したのは途中出場のディナターレ。ベテランらしく、スキルフルなシュートをそつなく押し込みました。

対するスペインも、その直後、イニエスタ、シルバと繋いで最後はセスクファブレガス。楔のパスからショートパスを2本で相手の最終ラインを突破した、実にスペインらしいゴールでしたね。

まずはイタリアから。この試合で目立ったのは、モッタとマルキージオという両インサイドハーフが攻守に渡り、ボールに絡みまくっていた点。そして、それ以上に、マッジョジャッケリーニの両WBが、攻撃では最前線に、守備では最終ラインにという奮闘ぶり。

この試合、イタリアは352というシステムだったのですが、イメージ的にはサンフレッチェに近かった。攻撃では両WBが最前線に駆け上がり、事実上の4トップのような形を作る。そして、その4択の中から最善のチョイスをしたうえで、ピルロが正確な縦パス一発で局面を打開してしまう、みたいな。ピルロの存在は広島とは異なりますが、WBにものすごく状況判断力と運動量が求められるという点では、ペドロビッチから森保さんへと継承されたサンフレッチェのサッカーに近そうです。

尤も、なんだかんだで、最後は正確なロングパスから少ないタッチ数でシュートまで持って行くところ、また守備では、デロッシを中心に、PAに入ってから非常に粘り強いところなど、解説の金田さんが仰っていたように、ベースとなるエッセンスはカテナチオ時代以来の良き伝統が下支えしていました。

一方のスペインですが、象徴的だったのは、特に後半、アルバが何度も相手ゴール横に全力疾走でオーバーラップしながら、なかなか使ってもらえなかったこと。また中盤に目を移すと、どちらかといえばシャビアロンソが消えていました。一方でシャビはいつものシャビ、凄いパスを平然と出し続け、セスクは同点ゴールを奪う活躍。そして、これまた金田さんが繰り返していたように、イニエスタのキレキレ加減は尋常でなかった。

何が言いたいか。つまり、この日のスペインは、攻撃の主軸を担うバルセロナ勢が、「いつものバルサのサッカー」をやっていたということです。勿論それは良くも悪くも、なのですが、ここでは「悪くも」の部分を強調しておきます。

というのも、これらバルサ勢にシルバも神出鬼没な動きで呼応し、ますますバルサっぽくなることで、スペインアタッカー陣に「異分子」がなくなってしまったのですね。なので、イタリア守備陣もどうにかこうにか対応できてしまった。バルサの場合、メッシという「スペシャル」が「異分子」の役割を担うのですが、この日のスペインには、そういう存在がいなかった。

実際、ナバスが投入され「生粋のウインガーっぷり」を発揮し、「異分子」の役割を果たすようになって以降、スペインの攻撃が活性化したのは、偶然ではないでしょう。

■フランス 1 vs 1 イングランド[06月12日 EURO2012]

基本的にフランスが押していたのですが。・・・先制点はイングランド。ハーフラインちょっとまえのフリーキックをジェラードが放り込み、CBのレスコットが乾坤一擲のヘディングを突き刺します。ただ、黙って引き下がるフランスではありません。バルサばりのパス回しでイングランド守備陣を揺さぶりながら、ナスリがミドルを突き刺し、同点に追いつく。

それからタイムアップまで概ね50分間、後半の最初の方に少しイングランドの時間帯もありましたが、ただひたすらフランスが攻めあぐね続けた試合でございました。

さて、フランス。これは解説の水沼さんが強調していましたが、フランスの攻撃は左偏重。ボード上は右ウイングであるはずのナスリが真ん中にいて、リベリは左に張ったままなので、右サイドは放置です。しかも、それによって発生するアンバランスを積極的に逆手に取ろうと意識も薄い模様。

前半から何度もスペースを埋めにオーバーラップをしかけたドゥビュシーは、ほぼ使ってもらえなかったですし、途中出場して右サイドの活性化を図ったマルタンベンアルファを生かそうという意図も感じられませんでした。

ナスリ・リベリーベンゼマの3人が攻撃の中心で、そこに左SBのエブラや、左インサイドハーフのマルダが適宜絡んでいくという感じだったのですが、悪い言い方をすれば、なんか、この5人が一つのグループを作ってしまっており、他の面々については、その輪から置いてけぼりをくらっている、そんなイメージがありました。

学生時代、クラスには、いわゆる「いけてるグループ」ってのがあって、その「いけてるグループ」が具合の悪い面々によって構成されると、文化祭とかの学級行事等で、もう一方の「いけてないグループ」のみならず、「中間派」までも疎外してしまい、結果、その行事が全く盛り上がらないというパターンが間々ありますが、なんだか、そんな雰囲気が漂っていたと思います。フランスがもう一段階ステップアップしたければ、気の知れた仲良し5人組が、いかに、「その他大勢」に対して心を開くかにかかってくるかと思われます。

話は変わりますが、5人組の1人であるベンゼマですが、この試合では、あまりPA内では待ち構えておらず、その手前のゾーンに引いて淡々とポストをこなしたり、あるいは左右に流れて、相手の守備ブロックの外周からミドルシュートの隙を伺っていました。

このプレースタイル、どこかで見覚えがあるぞ、と思ったら渡邉千真に近いのではないかと。たぶん千真の方が年上でしょうから、ベンゼマには「フランスorレアルの渡邉」という称号を与えたいと思います。

同じように、的確なポジショニング、カラダをクルクルと360°回転させながらマークを外すのが得意なところ、堅実なリンクマンとして攻守に存在感を示しながらも、かといって派手な活躍を見せないスタイル、それでも一度ピンチが訪れるとカラダを投げ出すことを厭わない献身性、などなどモロモロの要素を勘案したとき、イングランドボランチ、パーカーには「英国の栗澤」の称号を与えるのが相応しく、決して過大評価にはならないでしょう。