本当は、今週で「アジアカップ優勝の周辺をウロウロと…」シリーズを完結させるつもりでいたのですが、諸般の事情で最終回の「その」は来週末に延期でございます。というわけで、今週は、与太加減がこれ以上ない小ネタでお茶を濁します。
みなさん地デジカって好きですか?
2011年は地上アナログ放送が終了し、デジタルに一本化した記念すべき年になったわけですが、あまり最先端に付いていくことを得意としていないワタクシは、2010年に地デジデビューをしました。で、気づいたのが、「埼玉寄りの東京都なのに、映るUHF局はMXでも埼玉テレビでもなく、千葉テレビ」という衝撃的な事実です(最近チャンネルを設定し直したらMXが映るようになった)。ちなみに、たぶん正しくは「チバテレビ」。
とはいえ、チバテレビを見ることは、殆どありません。素人オバサマのカラオケのど自慢やら、どれだけ青汁を飲ませたいんだ?ってなテレビショッピングには、あんまり興味が湧かないのですね。
そんなチバテレビですが、ワタクシが地デジデビューした2010年というのは、ジェフもレイソルもJ2にいたことで実現した千葉ダービーを放送しました。まあ、見ますよね。せっかくですし。こういう機会でもない限りチャンネルを3に合わせることはないでしょうし。
いやあ、UHF局って良いですね。「勝つんだジェフ、負けるなレイソル」みたいな完全に「頑張れ千葉県」モード。こういう露骨な地域密着放送というのは、なかなか全国ネットではできません。これに対抗できるのは、大宮アルディージャのホームスタジアムをネーミングライツしているFM放送局の浦和レッズ中継くらいのものです。グッジョブ、セイタロー。
ともあれ、基本的にUHF局とJリーグで相性が良いと思うんですね。
スカパー!とかとの契約やらなんやら、いろいろ背に腹は代えられない大人の事情があったりして、やむを得ない部分もあるとはいえ、地方ローカル局のJリーグ中継が少なからず制限されてしまう現状というのは、「100年構想」という観点からは、やはり好ましくない。
話が逸れましたね。地方ローカル局ですから、予算的にも技術的にも、どうしても限界があります。必然的にアップや画面の切り替えなど、そういう部分はどうしても不親切になります。ただ、その割には、なんとなく見やすいんですね。
これはおそらく、毎年、高校サッカーの県予選を放映してきていたり、そもそも地元愛から、その地域のJクラブを応援してきたりっていうなかで、「サッカーが好きな人たち」がクルーを組んでいるからではないのかなぁなんて思います。そうです、愛はお金を超えるのです、きっと、たぶん、おそらく。
カメラワークに加えて、もう1つ特筆すべきはアナウンスですね。おそらく昵懇関係にあるであろう解説者の方と、もう、ひたすら淡々と技術的なことについて語りまくっている。
これは、なかなか全国放送ではできません。全国ネットの地上波放送だと、やはり「普段あまりサッカーを見ない視聴者」を意識しなければなりません。そういう層の顧客満足度を担保するためには、どうしても、普段からサッカーを見ている層からすれば「日本のマスコミはレベルが低い」と感じてしまうような、直接プレーとは関係しない人間劇場を前面に押し出したアナウンス手法を取らざるをえない。
それに対して、ローカルUHF局には、そんな「日本国民のマジョリティの満足度を薄く広くすくい上げる」なんてタスクは存在しません。
もう、ひたすら淡々とアナさんと解説者さんは、技術論談義を繰り広げる。そりゃそうです、中継を見ている人は、間違いなく「代表戦のときだけ『ニッポンがんばれ』って言いながら渋谷で騒ぎます」という層ではなく、「千葉のスポーツなら、なんでも好き。スポーツそのものに対する造詣も深いぜ!」っていう人々ですから。
そういう意味では、UHF局って、全国放送というよりは有料放送に近いですよね。
例えば、「絶対に負けらんない戦いがある」な感じの放送局の、「絶対に負けらんない戦い」中継のアナウンスを、倉敷さんが担ったとしたら、おそらく、「ぽぽぽん」で一躍有名になった某公共放送機構ばりにクレームが集中するでしょう、「難しすぎて眠くなる!!」と。一方で、千葉ダービー中継のアナウンスをチバテレビ上層部が倉敷さんにオファーを出したとしたら、その英断に拍手喝采が送られるに違いありません。
なぜならば、チバテレビで千葉ダービーを見る視聴者は、概ねサッカー好きだからです。
だから、何の前触れやら、補足説明もなく「おぉ、茶野と北嶋がマッチアップしてますねぇ」とか、感慨深そうに語り出したりします。わざわざチバテレビで千葉ダービーを見ようという視聴者は、茶野と北嶋が千葉の名門・市立船橋の3年生と1年生の関係だったことくらい、当然、知っているわけです。
千葉のスポーツ好きは、アナさんの一言を耳にして「きっと、16歳の北嶋少年が、18歳の森崎少年にパンを買いに行かされそうになり、それを見た鈴木少年が森崎少年をたしなめ、茶野少年は、その脇でホワワワンとしていたんだろな」とか、思いを馳せるわけですよ。
そうなってくると、解説者さんの呟きも至極マイペースになってきます。ロスタイム表示を見れば「どこで6分もロスタイムが発生したんですかねぇ?」と独り言したり、イエローカードが出されたシーンでは「普通のチャージにしか見えないですけどねぇ」と本音をこぼす。
あまり露骨なジャッジ批判は避けるという、全国放送局とJリーグの間の不文律というか紳士協定なんて気にしなくて良いローカルUHF局ならでわの「オヤジの呟き」が大変に好印象です。
というわけで、ビバ!UHFのローカル局!!
日本サッカーの未来は、あなた方が担っている!?