皆さん、里芋の葉っぱって見たことありますか?
ワタクシ、田舎もんではありますが、生まれ育ったのは地方のベッドタウンで、あまり田んぼとか畑には縁のない生活をしていました。・・・見栄を張りました。中学校の周囲は田んぼばかりで、部活で畦道を散々走らされました。が、関わりはこの程度で、なかでも畑になる作物やら、そういうものに触れ合った記憶は余りありません。
とはいえ、里芋の葉っぱがデカいことくらいは知っています。
翻ってワタクシの母。母は農家の娘でして、作物が植えられた状態の畑を見れば一発で、何を育てているかが判断できるという、そういう人です。その母が、ある時、畑に植わった里芋の葉っぱを見て、「まあ大きいなぁ」なんて感想を漏らしたことがあります。
そんな、誰でも知っている当たり前の事を、何を今さら言ってるんだと突っ込んだところ、「里芋の葉っぱの中でも特に大きい」と返されました。これは、実際に里芋を栽培した人にしか出てこない感想ですね。素人でも里芋の葉っぱの絶対値が大きいことは分かれど、「里芋の葉っぱ」というカテゴリー内での大小までは判断できません。
いや、ですね。先日、スポナビさんの中で、「バルサに比べてJリーグのレベルが低くてガッカリした」という、まさに誰でも知っている当たり前の事を力説されているブログさんをお見かけしました。
Jリーグのレベルがバルサより低いことは、その通りですし、「より高いレベルのプレーを見たいからJリーグではなく欧州サッカー専門です」というサッカーの楽しみ方を否定するつもりは一切ございません。
ただ、欧州サッカーを好む人々の中の、ごく一部に、「レベルの高い欧州サッカーを見ている自分はサッカー通だ(だからレベルの低いJリーグのサポーターはサッカーを見る目がない)」という自己陶酔に浸っている方がいらっしゃるようで、そこに少し抵抗を感じるのですね。
誤解をしちゃいけないのは、バルサやら欧州サッカーが好きな人とは、「レベルの高いサッカーが好きな人」であって、必ずしも、その全てが「通」であるとは限らないということです。
あくまで、ワタクシ的な見解なんですけど、ワタクシには遠く手の届かない「サッカー通」なる称号なるものが、どういう人に与えられるかっていうと、おそらくプレーの絶対値ではなく、そのプレーが繰り出された舞台というファクターを考慮に入れて、相対性のなかで評価を下せる人だと思うのですね。
具体的に述べるならば、欧州サッカーなら欧州サッカーなりの良いプレー・悪いプレーを判断できて、JリーグならJリーグなりの良し悪し判断ができる。同じように、JFLでも、ちゃんと好プレーを探し出せて、高校サッカーの地区予選を見ていて「今のプレーなら推薦で大学に行けそうだな」とか思える人が、たぶん「サッカー通」なのでしょう。
もっと具体的な例を挙げると、「さっきのオーバーラップしたなかでのトラップ、J2のDFにしては巧かったなぁ」とか、「さっきのエトーへのロングパス、スナイデルにしてはボール半分ずれていてbadだなあ」とか、そういう感想を持てる人って素敵だなぁなんて思います。
もちろん「どうせなら最高峰の妙技を堪能したい。だからヨーロッパのサッカーばかり見ています」っていうのは、人間として極めて自然な感情の発露だと思いますし、なんら問題はありません。
しかし、その後に「それに対してJリーグはレベルが低い(=つまらない)」という、余計な一言を添える、ごく一部の人々に対しては、どうしても、「そう思うのは、あなたがサッカーを楽しむにあたって『レベルの高いプレーを堪能する』というチャンネルしか持っていないからだろう。サッカーを多角的に楽しむという能力が決定的に欠落しているから、そう考えるだけでしょ!?」と反論したくなってしまうのですね。
多くのJリーグサポーターは、欧州サッカーの方がレベルが高くて、アスリートの超絶能力を堪能したいなら欧州サッカーを見る方が適切だなんてこと百も承知なんだと思います。実際、多くのJリーグサポーターは、欧州サッカーを見たら見たで、充分に楽しむでしょう(尤も欧州サッカーを年に数試合、地上波で見るだけワタクシは例外になりますが)。
にもかかわらず、なぜ敢えてレベルの低いJリーグを見るのか?
それはサッカーに「高いレベルのプレーを堪能する」以外のものを求めているからでしょう。つまり欧州サッカー(のみ)を好む人と、Jリーグサポーターでは、サッカーに求めるものが根本的に違う。もっと言えば、基本的な価値観が全く異なっているわけです。
当然、価値観の相違ですから、どちらが正しくて、どちらが劣っているとか、そういう問題ではない。だからJリーグサポーターが「欧州サッカーばかり見ているヤツは、サッカーを〈体感する〉ということの出来ない残念な人たち」って批判したとしたら、それは的外れも甚だしい。しかし、それと同時に、「レベルの高い欧州サッカーを好む自分は、プレーレベルの低いJリーグを見るサポーターより、サッカーファンとして上位にいる」なんて勘違いしている人がいたとしたら、やはり、それはそれで、一面的に過ぎるだろう、なんて思うわけです。
そんなこんなでイロイロ考えた梅雨明けの週末でしたが、改めて「〈人それぞれ多様な楽しみ方がある〉のがサッカーの持つ魅力であり、醍醐味である」だと気づけたという意味では、有意義だったなぁなんて思います。