身の丈経営の周辺をウロウロと…

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東京電力FC東京のスポンサーから撤退するとかしないとか。なんてニュースを耳にして、改めてJリーグクラブの経営について考えましたので、そのあたりのことを。

今から45年前、「Jリーガー、30歳定年説」みたいな状況がありました。

バブル的な状況で発足したJリーグ。諸外国ほどフットボール、或いはスポーツ産業に資金が流れる仕組みが構造化されていないにもかかわらず、開幕前後の泡泡状態に何かを勘違いしたらしく、本来の理念であろう「独立採算」を度外視した経営に、ほとんど全てのクラブが巻き込まれていました。

比較的早い時期に、そのような浮き世離れした経営からの転換を迫られたのが札幌とか湘南とかですね。

札幌の場合、ある意味、その後も尾をひく悪しき先例になるのですが、「J1に上がってしまえば、スポンサーもバシバシ付いて、スタジアムも満員になり、万事がうまくいく」という、今から振り返ればファンタジーとしか表現しようのない夢物語のもと、J2時代に無理をして、一度目の降格とともに、現実に引き戻されました。

湘南は、親会社が撤退。一気に緊縮モードに引きずりこまれます。親会社の会社名を排除したJリーグの場合、野球と違って、白馬の王子様が湯水のように損失補填してくれるわけではない、という事実を突きつけられました。

とはいえ、札幌や湘南などは、まだまだ序の口に過ぎません。「身の丈経営」が切実な課題となったピークは、多分いまから45年前のことでしょう。

2005年の前後には、どこのクラブも、高コスト体質からの脱却を、少なくともスローガンとしては唱えるようになりました。この頃になりますと、J1とJ2の差、J2における上位と下位の差が明確になってきましたので、もはや「一気にJ1まで!」なんてクラブはなくなりましたが、一方でJリーグの拡大方針により、J2参入のハードルが随分低くなった、厳密には低く見えるようになった。

結果として、「Jリーグにさえ参入すれば、全てが軌道に乗る」という幻想が、一部のクラブを包み込むようになります。要するに「J1に上がってしまえば、スポンサーもバシバシ付いて、スタジアムも満員になり、万事がうまくいく」の「J1」の部分が「J2」に縮小されて再生産されたわけですね。

その幻想にドップリ嵌ってしまったのが草津であったり、岐阜であったりといったクラブ。

草津はJリーグに特例を認められるなどしながらJ2にたどり着きました。しかし、その草津は、偉いさんの個人的な粗相もあったのかもしれませんが、スタジアムの使用料未納なんて窮地に陥りました。岐阜に至っては、JFL時代の方が面子は揃っていたんじゃないか、っていうくらいのリストラを余儀なくされています。

また、事情は少し異なりますが、ほぼ同じような時期にヴェルディもラモス監督時代の奔放補強が祟って、大幅に身を削らなければならなくなりました。

萩村選手などが契約満了となったわけですが、まさに「〈年俸ほどの戦力じゃないから〉というより、最早、〈30歳を越えているから〉というだけでクビを切られている」といった感がありました。ベテラン斬りが大流行した結果、「ベテランさえ斬れば健全な経営者ぶれる」みたいな風潮があったように思います。

そして、いままで述べてきたような諸々の破綻を、最も衝撃的な形で表現してしまったのが大分ですね。「ピッチで結果を出せばどうにかなる」みたいな眩惑は身を滅ぼすということを、一般サポーターの骨の髄まで知らしめることになりました。

しかし、その一方で近年、世間の趨勢には逆行するように、若手かベテランかを問わず、必要な戦力を積極的に補強するクラブもチラホラ出てきているようです。具体的には徳島や甲府が該当します。

徳島は、もともと優良安定企業が親会社ですので、ポカリスエットが売れ続ける限り、そして球団の代表が、親会社と円満な関係を維持する限り、ある程度の積極補強は可能だということでしょうか。富山なんかも、同じようなパターンですかね。

他方、甲府は、他のクラブに先立ってクラブ消滅の危機を迎えました。ただ、その分、ビジネスモデルを転換し、適切な経営スタイルを身に付けることにも、一足早く成功したという感じでしょうかね。もちろん、甲府の場合、たまたま極めて優秀な社長さんに恵まれたという僥倖もあるんだと思いますが、甲府のような市民クラブがパウリーニョやらハーフナーやらを獲得できるようになったわけですから、Jリーグ全体として高コスト体質からの構造転換も底を打ちつつあるのかもしれません。

そして、旧態依然とした高コスト体質を最後まで引きずっているのが京都と浦和です。両クラブとも体質改善を図る必要がなかったわけですので、当然といえば当然ですね。

京都については、チェヨンス選手を獲得したりするなど、むしろJ1にいるときよりJ2に落ちたときの方が、羽振りがよくなるのではないかとの錯覚に陥ります。蛇足ながら今シーズンのFC東京にも同じ臭いを感じるのワタクシだけでしょうか。。。

浦和については、犬飼さんがバブル的状況を作り上げ、一過性の「ビッグクラブ」化に成功しました。

ただ、そんな両クラブも、さすがに方向転換せざるをえなくなったらしい。京都は、柳沢選手に代表されるベテラン勢をリストラしましたし、浦和も、その責任を全てフィンケに押し付けなければならないくらいに観客動員を激減させました。

逆に言えば、ようやく「普通の」経営を求められる環境になったということですね。ごく最近まで高コスト体質を維持できてきてしまった浦和と京都の体質改善が済めば、ほぼ、安定経営の時代に入ったと言ってよくなるのではないでしょうか。そうなれば、Jリーグ全体を包み込む「風向き」も多少、変わってくるかもしれません。

ともあれ、一刻でも早く、「身の丈を無視した放漫経営」でもなく、「身の丈に応じた緊縮経営」でもない、「身の丈に応じた拡大経営」を、Jの各クラブがとれるような社会的環境が整うことを願ってやみません。