小倉隆史がグランパス監督に就任することの周辺をウロウロと…(後編)

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トヨタが本気に

ぶっちゃけ言って、オグが監督に抜擢された背景には、グランパスの新社長となった豊田章男の寵愛という要素の存在を否めない。あの豊田章男ですよ。アメリカ的なトヨタ潰しに対し、堂々とした演説で、それら姑息な工作を一蹴し、アメリカ世論を味方につけてしまった男、それが豊田章男。そんなトヨタグループの総帥が、グランパスの社長になった。

 

 

どういう理由で、突然、トヨタグランパス経営に本腰を入れたのかは存じ上げませんが(それまでは他の企業などに遠慮していたって説明はありましたけど)、これによって、いわばグランパストヨタの直轄領のようなものになったわけですよね。オグさんの人事も、いわば「社長室付」みたいな人事。これは個人的に、とても興味深いのです。

 

 

というのも、戦後モデルのスポーツ文化というのは、いわば「企業スポーツ」で、プロ野球も、企業名を関するビジネスモデルですね。それに対して、サッカーというのは、そこにアンチテーゼを唱えた。もちろん、多くの強豪は事実上の親会社に抱えられているわけですが、Jリーグが発達させたビジネスモデルというのは、市民球団としてのそれ。甲府に代表されるように、「親会社がなくてもやっていけます!」というノウハウは相応に蓄積されてきた。

 

 

それに対し、「戦後モデルとは異なる、企業名を出さない企業スポーツモデル」というのは確立されていない。あくまで企業名を出す戦後モデルの援用で済ませてきた。そういうなかでトヨタの本腰というのは、このあたりの新たな現代的モデル形成を加速化させるのではないかと期待するのですね。しかも、それが楽天ソフトバンクといった21世紀型企業でなく、トヨタという代表的戦後モデル型企業というところがミソなのですよ(同時に戦前モデル型企業でもあり、21世紀型企業でもありますけども)。日産や松下電工といった他の伝統的戦後モデル型企業に範を垂れることになりうるところに、とても期待感がある。

 

 

 

■初心者監督のJ1デビューへの懐疑

ただ、そのトヨタによる直接関与に移行して以降、初めての施策がオグの監督就任というところに不安がある。といっても、ここで強調しておかなければならないのは、別にオグの監督としての素養にネガティブなイメージを持っているわけでは決してないということです。むしろ、普段の言動からは、空気は読めるし、頭の回転も速い。自省心も十全ですし、コミュ力満載。大いに期待できる。

 

 

でもね、やっぱり、指導者経験が全くないOBをいきなりトップチームの監督に据えるというのはね・・・って気持ちがあるのです。サッカーには、降格制度がありますから、多少の苦戦は容認されても、大失敗だけは許されないわけですね。プロ野球だったら、こういう人事でも良いのですよ。ファンに叱られるだけで、トップリーグから脱落するということはないですから。

 

 

でも、サッカーについては、そうはいかない。だから、世界的に見ても、インザーギなどの例外もそれなりに目立ちますけど、監督についても、クラブ同様、下位リーグで実績を積むことによって、上位リーグに昇格するというプロセスが存在している。なので、企業スポーツの現代的モデルにおいては、こちらのコースを整備するのかな、と勝手に期待していたのですよ。それが、「信望のあるOBを、いきなり監督にさせる」というプロ野球的モデル(=戦後モデル)を持ち出してきた。

 

 

トヨタというのは、戦後型モデルでの成功体験もわんさかありますから、そこが不安なんですよ。ひょっとして、プロ野球的な戦後モデルをそのままJリーグにも適用させているのではなかろうか、と。もちろん、世界のトヨタの総帥ですから、ワタクシみたいな小市民でも考えつくような懸念材料なんて百も承知で、それを踏まえて勝算があると判断したんだとは思いますが、ちょいと杞憂したりもするのです。