ツイてない男・田坂和昭の周辺をウロウロと…(大分編)

                                  にほんブログ村 サッカーブログへ
にほんブログ村

■奇跡の昇格は割に合わない

昔むかし、反町康治監督に関する、弊ブログの、とあるエントリで、J2の名将というのは、構造的に損な役回りである、といったことを論じたことがあります。つまり、J2の名将は、本来ならJ1で戦える戦力でなくても、昇格を果たしてしまうのですよ。でも、それでJ1で通じるほど甘くない。“奇跡の昇格”と“必然の降格”がセットになり、そうすると、物事の本質がわかってない人(確信犯的にわかってないことにする人)は、“奇跡”を無視し、降格を“必然”ではなく、「監督がダメだから落ちた」と非難する。

 

 

田坂さんって、そのパターンですよね。他には石崎さんや小林伸二さんもそう。しかも、このパターンだと、往々にして、落ちた次シーズンに苦労する。なぜならば、クラブとしての(経営的、戦力的)体力を超えるチャレンジをしたことの反動が出るから。大分に関しては、その反動が、より顕著に出てしまった。例の、事実上の破綻から経営を立て直している途上にもかかわらず、想定外のJ1昇格を果たしてしまい、長期計画で算段していた以上の支出を余儀なくされたから。J1昇格で、支出と同じくらい収入が増えればよいのですが、世の中、そんなに甘くない。大分の場合、結果的に、2013年のJ1昇格は「計画再建の予定がおかしくなってしまった」という大きな大きな負の遺産を残すことになったような気がします。

 

 

 

■土壌改良中の難しさ

話は変わりますが、農業って難しいですよね。いろんな難しさのなかでも、特に人類の頭を悩ませてきたのが、「土壌」の問題。同じ畑で、同じ作物を作り続けると、どんどん土地が痩せていく。だから、定期的に休耕にしたり、異なる作物を栽培したりしないといけない。これって、サッカーの監督さんに似てますよね。だから、多くの場合、「サッカーの監督は3〜4年で1つのサイクル」と言われる。田坂さんの場合、初年度に丹誠込めて作物を作ったところ、評判が良すぎて、2年目は容量以上の作付けを余儀なくされ、結果、荒涼とした畑だけが残された、ってな状態で2014シーズンを迎えた、と。

 

 

長期政権って、ファーガソンとか西野ガンバとか、いわゆる“ビッグクラブ”に多いですよね。それは、経営的体力があれば、土地が痩せないための措置をとれるから。肥料を潤沢に加える(毎年のように新戦力を補強できる)とか、異なる作物を作付けできる体制がある(異なる戦術を採用できる=選手の入れ替えができる)とか。逆に言うと、予算が潤沢でないクラブの長期政権は、連作に堪えない土壌で、十分な肥料も与えられないまま、単一作物を作り続けさせられるようなもの。

 

 

2014年に自分の田畑が荒れ果てていることを痛感した田坂さんは、2015シーズンも指揮をとることとなって、抜本的な土壌改良に着手したんだと思うんですよね、たぶん。一回、土を入れ替えよう、と。そうなると、新しい土が土地に馴染むまで時間がかかるし、その間は出来の良い作物は育たない。それを承知で土壌改良に着手した。肥料も代替作物もないなら、そうしないことには仕方ない。で、時間をかけて土を生き返らせようとしている間に解任されてしまった。そういうことなのかなぁと、田坂さんに一定の評価を与えるべきだと考えているワタクシなんかは思うのですよ。本当なら、今頃、青々とした平野には、稔りの季節が訪れていたかもしれないのですが、気がつけば、その田んぼには柳が生えていた。田坂和昭、ツイてないです。