「よく似ているようで、実は対照的。」ってな試合【選手権決勝】の周辺をウロウロと…★テレビ観戦記★

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■星稜 4 vs 2 前橋育英[高校サッカー決勝 01月12日]

試合は拮抗するものかと思いきや、あっさりと動きます。前育がバックパスをミスって相手へのプレゼント気味となり、GKが10番大田を倒してしまう。PK献上。それを9番の前川がきっちりと決めて、星稜が先制します。もっとも、だからといって星稜のペースといった感じでもなく、まぁ高校生らしい、ガチャガチャとした潰し合いが中盤で繰り返されていました。見ていても忙しい展開。こういうのはJリーグも含めて日本サッカーの特徴といえそうです。

 

 

ポゼッション的には両チームとも大して変わらなかったと思いますが、どちらが前線にボールが収まったかといえば星稜。なので、どちらかといえば星稜の方がストレス少なく試合を進められていたかもしれません。とはいえ、一方の前育は前育で、エースの10番渡辺凌磨が何度もミドルシュートを撃ちまくっていたので、それなりに狙いとするところは表現できていたのかもしれません。そんなわけで、前半は決勝戦らしいしばき合いと評価して良いのではないかと思われます。

 

 

後半に入ると、前育が試合を動かします。ついつい鈴木・渡辺の2枚看板や、9番の青柳に目がいってしまうんですけど、伏兵の野口が、GKの縦一本から超絶な身のこなしで相手DFと体を入れ替えて、そのままシュートを決めてしまいます。いやぁ、びっくりた。素晴らしい出し抜け。勢いに乗る前育は、間髪入れず渡辺凌磨が星稜ゴールに襲いかかります。左サイドを突破から深い深い切り返しで相手守備陣を置き去りにすると、スピードといいコントロールといい完璧な精度のミドルシュートを突き刺しました。

 

 

ホント、目を疑うかのように、ガラリと情勢が変わりましたね。後半に入るなり、突然、圧倒的な前育ペース。サッカーにおけるハーフタイムというのは、かくも恐ろしいものなのか、と。ただ、「一変した状況を追い風に、そのまま前育が押し切るのかな」と思い始めていたら、星稜は星稜で伝統校らしい「気合いと根性」を発動させるんですよね。カウンターからナンバー10の大田(右SH)が右サイドを蹂躙。そのクロスに、なぜかゴール前にいた3番の原田(右SB)がヘディングシュートを放り込み、同点に追いつきました。

 

 

これで、スコア的にも、内容的にも、本当の意味で「五分と五分」。互いが自分たちのサッカーを表現し続ける。時間の経過とともに、前半上手くいかなかった分、メンタル的なスタミナが残っていた前育の個人技が炸裂するようになり星稜ゴールを脅かすのですが、高校生年代だけあって、体力が落ちない。星稜も前育もインテンシティが持続される。引き締まった、(高校選手権基準では)ハイレベルな攻防は、雌雄が決することなく延長戦へ。

 

 

延長戦に入ると、星稜が勝ち越しに成功します。前育の先制点における野口のようなカラダの入れ替えで星稜11番森山がシュートチャンスを迎えると、そのまま突き刺しました。さすがCF、ダテにルックスがゴツくない。これで苦しくなった前育は、ついついエースの渡辺を頼ってしまいます。結果として、相手最終ライン裏への縦ポンばかりが目立つようになる。じっくり攻め直すということができなくなる。単調なリズムへと陥っていきました。

 

 

延長の後半に入ると、ますます延長前半の構図が明確に。すなわち前橋育英が渡辺への縦パスonlyとなり単調になっていくのに対し、精神的に余裕を得た星稜は高校生的スポーツマンシップに則り、最後まで丁寧かつ実直に攻撃を仕掛けていく。そして終了間際には、再び森山が得点力を見せつけます。ものすごいドッカンのロングシュートを突き刺しました。この試合を見た一部の人たちは「だから時間稼ぎなんかせずに、最後まで攻め続けるべきなんだ」とか言い出すんだろうなぁと思うと、一抹の不安が残りますけど、ともあれ、星稜の素晴らしい初優勝でした。

 

 

 

野洲高校がセクシー旋風を巻き起こして以降、なんだかんだで高校サッカーはパスサッカーを志向するトレンドにあって、この決勝戦なんかは、その象徴のような試合で、星稜も前橋育英もスキルフルな地上戦サッカーを得意とするチーム同士。ただ、若干の違いもあって、前育は「蝶のように舞い、蜂のように刺す」じゃないですけど、ワンタッチ・ツータッチで素早く崩していくのに対し、星稜はフィジカル勝負にも自信があるのか、CFを中心に相手を背負ったり、うまくマークを剥がしたりりしながら、しっかりとボールを収めてから次のプレーに移る。なので、特に前半は若干ながら、前育の方が窮屈に見えました。

 

 

よく似ているようで、実は対照的という意味は、両チームの10番もそんな関係。星稜10番はFWの大田。この選手はゴールも奪っているのですが、中盤まで下がってゲームメイクにも参加するテクニシャンで、ルーニーにような選手。対する前育の10番は中盤の渡辺凌磨。こちらは中盤なのでゲームメイクを主としながらも、ガンガンにシュートを撃っていく。なので星稜10番の大田と、前育10番の渡辺は、「中盤の仕事もするFW」と「FWの仕事もする中盤」という関係にあって興味深かったです。