【御蔵出し】乾君の憂鬱海外挑戦の周辺をウロウロと…【23年前の移籍事情】

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引っ越しかなんかの時に、それまで書き止めていたコラムめいたエントリーの下書きを保存したUSBメモリーを紛失したのですが、それが先日、発見されました。それを【御蔵出し】シリーズとして不定期連載していきたいと思います。そんなわけで本シリーズは、エントリーが書かれた当時の頃に記憶を戻してお読みくださいませ。

まだ、乾貴士セレッソにいた頃のお話。セレッソ晩年の乾は、それまでのシーズンに比較して、「プレーに迷いが見える」みたいな評価をされていましたよね。その辺のことをば。

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皆さん、日々を生きる中で、「なんでオレだけ…」って感じることってありませんか?

例えば、学生時代に席替えをして、いっつも教室の前の方の席になってしまったり、フォークダンスが好きな子の直前で終わってしまったり、バレンタインの日にわざとらしく用もなく教室に居残っていても結局なにもなかったり。

そんなことは、まあ、可愛いものですが、オトナになると、もっとややこしいシチュエーションが発生したりします。例えば、自分と色んな意味で互角っぽい周囲の連中が次々と先に出世してしまったりすると、その焦燥感というか、やるせなさというか、「どうすれば良いんだ?」感がハンパなくなります。みたいなことを。

2011シーズンの6月中頃、セレッソの乾選手がクルピ監督から干されてしまった時期がありました。理由はイロイロあるんでしょうが、ザックリまとめると、海外挑戦で頭の中が一杯になってしまった乾君は、ついつい、その影響で真摯な態度を取れなくなってしまったり、契約あれこれで何かやっちゃったり、ともあれ「オトナなんだから、そういうことしちゃいけないでしょ!」的な粗相をしてしまったようです。

別に乾君を擁護するつもりはありませんが、日本メンタル弱い連盟会長を自認するワタクシ的には、ここは1つ同情をしてみようではないか、と。結局、乾選手の問題の根底には「海外挑戦」というキーワードがあるわけですね。なので、日本人の海外挑戦について考えてみますと、概ね3類型にパターン分けできるように思います。

1つ目には森本選手や宮市選手、さらには高木選手に代表される在り方で、将来性を見込まれて、青田狩り状態で、異人さんに連れられて行かれちゃうパターンのヤツですね、赤い靴ばりに。森本選手が特例的に早い事例になりますが、全体としてオランダのクラブに引き抜かれることが多いようなので、そういう意味では吉田麻也選手あたりが、この道を開拓したと言えるでしょうか。このパターンで欧州に移籍するための前提条件は、ズバリ「若いこと」。具体的には、遅くとも2021歳くらいまでには、できれば10代のうちに、スカウティング網に引っかからないことには、このルートには乗れません。

2つ目は日本代表に定着するなかで、世界的な注目の高いステージにたどり着き、そこでの活躍が認められて移籍するパターン。これが現在までの、日本人による海外挑戦の王道ですね。先鞭を付けたのは中田英寿。そこに続いたのが名波浩。その後も、大黒や小笠原や西澤や柳沢や黄金世代などなど、トルシエ界隈で活躍した選手は概ね、このパターンですし、南アフリカWCのベスト16戦士たちが大挙して海を渡ったことは、記憶に新しいところですね。このパターンで海外移籍するための前提条件は、「代表に定着すること」ということになります。

さらに最後、3つ目のパターンとして、本田選手や藤田俊哉選手のパターンがあります。本田選手の場合は青田狩り的要素もあったと思いますので、藤田俊哉選手を例にとりますと、藤田選手の場合、代表にはなかなか縁がない一方で、しばしば「Mr.Jリーグ」と称されたように、黄金期ジュビロの屋台骨として、リーグ戦で大活躍を続けました。つまり、日本人による海外挑戦の3つ目の在り方として、「Jリーグでの活躍が認められて移籍する」ってパターンが、なくもない。この場合の前提条件は、言わずもがなで、「Jリーグで大活躍すること」となります。

さて、上述の3択のうち、乾選手の場合、ほんの数年だけ早く生まれすぎたことにより、「青田狩り」は厳しい。そうなると、「代表に定着すること」ということになるわけですが、特に攻撃的MFの場合、このパターンでの移籍は、しばらく難しいでしょう。現時点で日本代表のアタッカー陣は、多くの枠が海外組で埋まっています。

しかも、このポジションには青田狩りにより海外で揉まれている選手も控えている。つまり、攻撃的MFに限れば、国内組が代表に定着するハードルが非常に高く、代表に定着するためには海外組でなければならない、みたいな状況が出来ている。

図式的に述べれば、これまでは「代表→海外」だったのが、いまや「海外→代表」となってしまったということです。そう考えると、乾選手が海外移籍を果たすためには、「Jリーグで大活躍すること」しかない。しかし、どうやら、この方式での海外移籍は、単純に「Jリーグで活躍した順」ではないらしい。例えば家長選手やカレン選手。彼らをクサす意図はありませんが、彼らが乾選手の何倍もJリーグで活躍したかといえば、そうとも言えないでしょう。

乾選手の立場からすれば、海外に挑戦するための最後の選択肢である「Jリーグでの活躍」において結果を残してきたにも関わらず、一向にお呼びがかからない、しかも、同じくらいの活躍をJリーグで残した家長選手が海外移籍を果たすのを間近で見せつけられた、ということになります。

家長選手がJリーグでも他の追随を一切許さないくらいの大活躍したのなら、まだ諦めもつくと思いますが、きっと乾選手的にも、「自分だって、同じくらいの結果を残した」という自負もあるのでしょうから、そうなると、「じゃあ、これ以上、何をどうしたら良いんだ?」って気持ちになるでしょうし、「なんでオレだけ…」って気分にもなるってもんでしょう。日本メンタル弱い連盟会長を自認するワタクシ的に同情せざるをえない所以です。

もちろん、自分の不安定な精神状況で周囲に迷惑をかけてはいけません、・・・と学校では習いました。しかし、やはり重要なのは弱っている人への思いやりだと考えるワタクシとしては、乾選手に対して「絶妙にタイミングの悪い世代に生まれちゃったね(はあと)」って同情したいと思います。

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今シーズンの乾も、昨シーズンに比べてコンディションが良くないみたいですね。彼は2年目と3年目とかになって「無我夢中」ではなく精神的な余裕ができると、そこの余裕の部分でアレコレ考えすぎて、プレーにブレが生じてしまうタイプなんですかね? だとしたら非常にマジメな好青年。きっと直にお会いしたら友達になりたくなるような気がします。