AKBの戦略との類似2ステージ制復活の周辺をウロウロと…/7

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□「正当な王者の誕生を期待している」という幻想

サッカーが好きな層って、野球も好きなんですかね? あるいは、Jリーグを観る人々はプロ野球も観るのかしら? ワタクシは〈戦後のプロ野球文化〉に対するアンチテーゼとしてJリーグに飛びついたクチですから、今やほとんど野球は見ません。ただし、さすがにポストシーズンだけは、その時間帯に家にいたならば、ついついチャンネルを合わせてしまいます。「森福の11球」とかはリアルタイムで見てました。ただ、「その年のレギュラーシーズンでソフトバンクがどれくらい強かったか?」とか、「シーズン通して森福がどれくらい活躍したのか?」とかまでは知らないまま。その後、チェックをすることもなくって感じ。

あくまでワタクシごとですから、これを安易に一般化しちゃいけないと思うのですが、世の中には「クライマックスシリーズ日本シリーズだけを見る」って層が確実に存在していて、そういう層の一定の割合は、別に「そのシーズン最も強かったチームがどこであったか?」には興味がない。では、なぜワタクシはクライマックスシリーズとか日本シリーズをチャンネルが合えば見るのか。答えは簡単で、チャンピオンが決定する場に画面越しながら立ち会えるからです。要するにライトな層は「王者決定の瞬間を見たい(だけ)」という目的でポストシーズンを観戦するのであって、「年間の勝ち点の合計が最も多かったチームはどこか」なんてどうでもよかったりする。大相撲の千秋楽だけを見たり、ドラマの最終回だけを見たり、そういう感じですね。コアなサポーターは、まず、この点を理解しないといけない。

□成熟と拡大のローテーション

そもそも、Jリーグ発足当初は2ステージ制でした。なぜか。それはつまり、Jリーグが生まれて、ファン層を拡大することが至上命題だったからです。現在のナビスコカップでも、〈予選はガラガラ。でも国立での決勝戦だけはほぼ満員〉という現象があります。それだけ「決勝戦=王者を決める戦い」というものにはインパクトがある。当時のチャンピオンシップにも、同じような状況があって、「ふだんのJリーグは知らないけど、チャンピオンを決める試合だけは見ておこう」という層が、当時高校生とか大学生だったりしたワタクシの周りには、相当数、存在しました。未来のことは誰にもわからないので、同じ方法論が今の御時世でも通用する保障はありませんけど、それなりに「ファン層拡大」効果はあるかと希望的観測します。ともあれ、第1次2ステージ制時代のJリーグは拡大期だった。

それに対し、1ステージ制を採用していたここ10年はどう位置付けられるかと言うと、端的に述べれば「成熟期」ということになろうかと思います。つまり、「日本のサッカーファンも目が肥えてきたから、サッカーリーグが本来持っている本質的な魅力で勝負(=商売)しよう!」という時期。で、実際にコアな顧客(サポーター)はそれなりに付いた、と。

□AKBの「なかなか会えないアイドル」化

さて、唐突ですが、AKBを例示として現在のJリーグを考えてみたいと思います。‘商法’とかいって揶揄されることもありますが、個人的には秋元康って凄い人だと思います。といいますのも、秋元さん自らが手がけたおニャン子クラブを含め、松田聖子中森明菜をはじめとするAKB以前のアイドルって、基本的に「国民全体に広く愛されるアイコン」だったわけですね。しかし、端的に言えばテレビが〈一家に一台〉から〈一人一台〉になったことで、そういう‘浅く広く’戦略が通用しなくなった。モーニング娘。こそ頑張ってましたが、基本的には‘アイドル冬の時代’。

そこで秋元康は、そもそものビジネスモデルにコペルニクス的転換を加え、‘狭く深く’戦略を採った。「会いに行けるアイドル」というのは、逆に言うと「わざわざ会いに来るヤツだけを相手にする」ということになります。そういう人たちは、全てを了解したうえで、主体的意志を持って、‘CD付き握手券’を大量に購入する。大量購入してくれる分、客単価が高くなるから、パイは少なくとも産業として成立する。

しかし、秋元康はAKBが「秋葉原のアイドル」として一定の認知を得ると、すぐさまガンガンにテレビへと仕掛けていった。そして順当に‘国民的アイドル’へとなっていった。その過程で、AKBは「会いに行けるアイドル」から、「そうそう会ってはくれないアイドル」へと属性を変え、その変化を快く思わない、既存のコア層の一定数は離れていったでしょう、たぶん。でも失った一定数のコア層と引き換えに、それを補って余りあるマス人気を手に入れた。桁がいくつも異なるマーケット規模を獲得したわけです。

いままでのJリーグって、つまり「会いに行けるアイドル」だった。しかも、AKBと違って客単価が高くない。むろん、そのマーケット規模に合わせて、ニッチなエンターテイメントとして生きていく方法もあったと思いますが、事務局としてはマスを目指した、と。そのためには一定数のコアを失うのは仕方ない、そういう判断を下したんだと思います。もちろん、マスを目指したところで失敗して「そもそも会いたいとは思わないアイドル」になる可能性も低くはないでしょうが、それはともあれ、既存のJリーグサポーターは、「会いに行けないならアイドルとして応援しない」のか、「会えなくなっても変わらず応援する」かのどちらかの選択を迫られているといえるでしょう。