同床異夢2ステージ制復活の周辺をウロウロと…

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■2ステージ制の復活へ

いやあ、今年の春になってからですかね、突然、降って沸いたように表面化した「2ステージ制復活問題」。そして、突然発生した議案は、サポーターの意見を裏切る形で強行決議されたようです。いま「サポーターの意見を裏切る形」と述べましたが、スポナビブログをお読みになるようなコア層には周知のとおり、2ステージ制復活に対するサポーターの評判はすこぶる悪い。なぜ評判が悪いかは後で述べるとして、まずは、復活することになった2ステージ制の概要をば。。。…と、思ったのですが、あまりにも煩雑なため、適宜、スポーツ新聞等のサイトでご確認くださいませ。

ともあれ、世の中に光と影があるように何事にもメリットとデメリットがございます。当然ながら2ステージ制にも良い面と悪い面があります。しかも、かなり単純な。まずは悪い面から挙げますと、「年間チャンピオンと、一年間で最も成績が良かったチームが不一致しかねない」という問題ですね。もう、これだけで決定的な問題点です。で、そこから派生して、「(そのような不合理を排除している)ヨーロッパのスタンダードから逸脱する」という副次的な問題も出てくる。一方、良い面は、「メディア露出が増えるなど、新規スポンサーや顧客を獲得する機会の創出が期待される」、これに尽きるでしょう。

■拙速な改革の背景

では、Jリーグ執行部は、なぜ、「年間チャンピオンと、一年間で最も成績が良かったチームが不一致しかねない」というデメリットを甘受してまでも、「メディア露出が増えるなど、新規スポンサーや顧客を獲得する機会の創出が期待される」というメリットを重視したのか。それは、‘観客動員数(=宣伝価値)が頭打ちになっている’という現状があるからでしょう。これは容易に推察されます。

では、なぜJリーグの観客動員力は頭打ちになったのか。思うに、ここ20年くらいの間、我々サポーターも含めて前提としていた仮定が成り立たないってことが明白になったからではないかと。我々が前提としていた仮定とは、すなわち、「代表人気に牽引される形で、日本にもサッカー文化が浸透し、それが国内リーグにもフィードバックされるに違いない」という仮定です。

しかし、少なくとも2002年からの10年少しの歴史は、「‘サッカー日本代表’のファンは、‘日本代表’のファンでしかなく、決して‘サッカー’のファンではない」ということを明らかにしてしまった。つまり、現在、Jリーグは、サポーター拡大のための方法論を抜本的に見直さなければならなくなっているわけです。今回の拙速な改革は、そのような脈絡の中に、まずは落ち着いて位置付けなければならない。

Jリーグの歴史的段階

次に、なぜ、2ステージ制再導入が2015シーズンという時期になったのか、を考えてみたいと思います。私見では、この点を考える鍵はJ3発足にあるように思います。J3構想は以前から取り沙汰されていました。ただし、これまでのJ3構想というのは、「J1のチーム数が多すぎるので、10クラブ前後のスーパーリーグを作って、残りのチームを再編成する」という脈絡で意見されてきたものです。しかし、そのような理由でJ3が誕生することは決してなく、J2とJFLの入れ替え戦が発生したことを受けて、J2からの降格チームに受け皿を作らなければならない、ということで実現したのが今回のJ3構想です。

つまり、〈18チームによるJ1と22チームによるJ2〉というフォーマットが満たされたからこそ、より大きなフォーマットが必要となり、J3が誕生したわけですね。逆に言えばJリーグはこれまで〈40チームによる2リーグ〉の実現を至上命題として、さしあたりは、それ以外の部分を捨象してきたということです。Jリーグ発足からの20年間というのは、そのようなフォーマット、いわば‘箱’を作ることに専心する時代であったといえる。そして、ここに至り、その‘箱’が形だけでも完成した。当然、次の課題は、そのように作り上げた巨大な箱に、中身を詰め込む作業です。歴史的段階として、Jリーグは、(テレビ観戦も含めた)観客動員増加を最優先課題とする時期にさしかかっていることは間違いないでしょう。

■事務局とサポーターの同床異夢

問題は、〈いまは新規顧客発掘に全力を尽くす段階である〉という意識が、どこまでJリーグ事務局とサポーターの間で共有されているか、という部分。先に述べたように、多くのサポーターは「年間チャンピオンと、一年間で最も成績が良かったチームが一致しかねない」という理由で2ステージ制復活に否定的な姿勢を見せています。ワタクシも、本音は1ステージ制の方が絶対的に好ましいと考えます。ただ、重要なのは、そのような批判的言説の根本は、「それでは既にサッカーファンである人は喜ばない!」というところにあって、「あまりサッカーに興味を示さない層を取り込むにあたって、2ステージ制より1ステージ制の方が魅力的である!」という視点が弱いように感じるところです。

簡単に言うと、Jリーグ事務局は「ふだんJリーグに興味を示さない人にJリーグを見させるためには、どうすればよいか?」というところを追求しているのに対し、サポーターは「現にサッカーに興味を持っている人々が納得できるあり方は何か?」という視点でものを考えている。同じ‘Jリーグ’というプロスポーツリーグに対し、「(少なくとも現状としては)新規顧客への敷居が低いリーグを!」という夢を持つ事務局と、「既存顧客の満足度の高いリーグを!」という夢を持つサポーターたち。ここのギャップを埋める努力が双方に求められているのではないでしょうか(‘双方に’ってところが重要)。