「そういや、その昔、阿部って‘日本のベッカム’呼ばわりされてたよね」とか感慨に耽けつつ、日本人選手のボールを貰う技術に思いを馳せる【イラクvsヨルダン】&【マンUvsガラタサライ】の周辺をウロウロと…★テレビ観戦記★

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イラク 1 vs 0 ヨルダン[ワールドカップアジア最終予選 11月15日]

渋い展開がジリジリと続いて、それなりに試合が動き出して以降も、互いに決定力が不足し、守備陣が粘り強く対応するという、いかにもスコアレスドローになりそうな雰囲気の中、イラクのフンマディが試合終了間際に乾坤一擲の一撃を突き刺し、イラクが予選突破に一縷の望みを繋げました。

試合展開を一言で述べれば「ロングボール」の応酬。サウジアラビアやUAEが強豪国として名を馳せていた往年の中東では「しっかり守ってロングカウンター」というのが主流でしたが、そういう感じとはどこか趣を異にしています。とはいえロングボール中心であることには変わりなく、クライフにかかれば「アンチフットボール」と一刀両断されるに違いない、そういう光景が繰り広げられておりました。

ただ、似た者同士の組み合わせですから、互いに対処法は心得たもの。FWのクサビなり、ロングボールには厳しくガツンと潰しに行く。前半は、ただただ、その応酬です。アタッカーとディフェンス陣の‘ぶつかり合いコンテスト’。

そうなると、両チームとも、何らかのプラスαを加えねばなりません。ということで、イラクは左ウイングのヤシーンの突破力をアクセントとして攻勢を強めます。このヤシーン、地元では「イラククリロナ」と呼ばれているそうな。

確かに、クオリティの絶対値はともあれ、ポジションやらプレースタイルやらは似ていますし、ルックスも、当然ながらアジア色は本家より濃いのですが、系統としてはクリロナの方向性にありましたから、「イラククリロナ」の異名も許されるでしょう。少なくとも、10年程前に、当時ジェフに所属していた阿部勇樹に付けられた「日本のベッカム」よりは妥当性が高い。阿部に関しては、「比較的モテ顔」と「フリーキックが上手い」以外に、ポジションといい、プレースタイルといい、全く共通点がありませんでしたからね。

ともあれ、60分過ぎから左サイドを中心に地上戦での崩しを増やしていったイラクが、ときおり繰り出すヨルダンのカウンターに苦しめられながらも、神様から「ちゃんとサッカーをやろうとした御褒美」を与えられて、中東決戦を制しました。

マンチェスターU 1 vs 0 ガラタサライ[09月21日 チャンピオンズリーグ12/13グループステージ]

ワンツーから香川がラストパスを出して、キャリックがしっかり決めた。これがマンUの先制点。香川が絡みましたので、覚えている人も多いかと。縦に速い、流れるようなパス交換の一部として機能したわけですが、香川的にはワンツーを受けたときの位置取りが良かったですね。PA内でしたので、本来ならばプレスが最も厳しい場所。そこで巧みな足技を披露するんですから、立派なもんです。

日本にいたときも、もちろんスペシャルなシャドーでしたので、そういう高い位置でのボールの貰い方は上手だったとは思いますが、彼のボールの貰い方に、そこまでのインパクトは感じていなかったというのが、正直なところです。

その理由としては、言うまでもなくワタクシの目が節穴だったってのが最大の要因なんでしょうけど、それとともに、日本とヨーロッパにおけるサッカーの質(レベルではなく)の差って部分も多少は関係するのかな、とも思ったりします。

日本人というのは、‘勤勉であること’に価値を置きますから、まずはキッチリと生真面目に守備をしようとする。前線の選手も、ペース配分であるとか、効率的であるかいなかとか、そういう部分を副次的ところに追いやって、キックオフから体力の続く限り走り回ります。

一時期、岡田JAPANが‘玉砕プレス’として批判されましたが、程度の差はあれ、Jリーグの場合、ほとんど全てのチームが、日本国外の基準からすれば、‘玉砕プレス’の範疇にあるサッカーを展開しています。この辺は国民性としか言いようがない。

逆にヨーロッパや南米などは、‘勤勉であること’の怨霊に取り憑かれるってことがないので、中盤のチェックに、そこまでは命をかけない。後先を考えないハードプレスなんて、そうそうお見掛けできないですよね、おそらく。

そして日頃からハードチェックに慣れているということは、‘ボールを貰う’という技術が磨かれているということですから、その部分だけを考えれば、他の技術や要素に比べて、日欧の差が小さいのかな、と。特に試合序盤に関していえば。Jリーグで前を向ける選手はチャンピオンズリーグでも前を向ける、といっても良いような気がします。

なので、問題は、‘受ける技術があるか否か’ではなく、‘出してもらえるか否か’ってところにあるのな、とも思います。

具体的に、欧州に移籍してポンっとチャンスをものにできた日本人アタッカーとしては、香川の他に清武がいますよね。逆に、ハーフナーや森本といったところは、なかなか苦戦している。もちろん、そこにはサッカースタイルとの相性とか、そういう要素も絡んでくるんだと思いますが、それとともにキャラも重要なのかなと感じたりもします。

昔の小笠原や柳沢が上手くいかなかったことも含めて考えると、欧州でうまくいくためには、(ヨーロッパ人目線からしても)‘とっつきやすさ’を感じるような、陽性のオーラを醸し出すキャラクターが大切なのかもしれないと考えさせられた一戦でございました。