監督交代の周辺をウロウロと…/4【川崎フロンターレ編】

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本当は一回で終わらす小ネタのはずだった本シリーズ。なんやかんやで4回にも及んでしまったわけですが、最終回はフロンターレ。このクラブも横浜FCと同様に、シーズン開始直後に監督を交代させました。すなわち相馬監督から風間監督へとスイッチしたのですが、まずは相馬さんの成績を軽く振り返ってみましょう。

フロンターレの2011シーズンの最終順位は11位。それまでは5年連続でベスト5をキープし、前任者の高畠さんは5位という成績にもかかわらず退任したのですから、良い成績とは言えませんが、一方で、一つのサイクルを終えて、長期的スパンで次のサイクルへの切り替えを託されていたってことを踏まえると、メチャクチャ悪いって程でもない。

なので、規定路線に沿って2シーズン目を迎えたことは妥当な判断かと思われます。ただ、相馬さんとて、「契約期間内だから満了のためのラストチャンスを与えられているにすぎない」という、自己の立場をよく理解していたのでしょう、2012年シーズン序盤は、なりふり構わず勝ち点を積み重ねにいきました。その分、かなり守備的な戦いになりましたが、成績だけみれは特別に悪いって程でもなかった。

にもかかわらず、相馬さんは任を解かれた。それは何故か?

思うに、相馬さんの生真面目な性格が、チームの雰囲気から活気を奪っていたのではないか、と。相馬さんといえば、かつてフランスWCに導いたときの岡田武史氏について、現在はガイナーレに所属している岡野選手は次のようなコメントを残したことを思い出します。

「岡田さんはイロイロ文学的な比喩などを使って、丁寧にモチベーションコントロールをしてくれる。ただ言ってることが難しくて、よく意味がわからない。そういうときは相馬さんとか頭の良い人に聞きにいく」と。つまり、相馬さんは頭が良いのです。しかも解説者時代のベシャリを聞く限り、いわゆる優等生タイプの頭の良さです。要するに生真面目な人だと思われます。

自らの学生時代を振り返れば皆さんも思い当たるかと思いますが、そういう生真面目な優等生君って、なかなか凡人には近づき難いですよね。Jリーガーになるのは、圧倒的に体育会人間が多いと想像されますので、その近づき難さは、より一層のものでしょう。

そういう部分で、相馬さん自体に非はなく、むしろ人格者なんでしょうけど、人格者ゆえに、チームの雰囲気を微妙にしてしまうってこともあったのかな、と。

またまた、学生時代の記憶を手繰り寄せていただきたいのですが、文化祭や体育祭みたいなクラス行事って、生真面目な優等生君とか学級委員さんより、「ノリのいいヤツ」が音頭をとった方が盛り上がりませんでしたか?

真面目な学級委員がリーダーになると、もちろん優秀なヤツなので、それなりに朗らかなムードのなか着実に物事は進んでいくことにはいきます。険悪なムードになったりすることもなく。

ただ、「脱線」やら「悪のり」がない分、爆発的な活気は発生しませんよね。「活気」は、「生真面目な空間」には発生しません。「やんちゃなリーダーが醸し出す雰囲気の中、ギリギリ許されるムチャ(逸脱)を、真面目なサブリーダー的な縁の下の力持ちが裏でどうにか枠内に収めている」って空間に発生するんだと思います。

だから、ひょっとしたら相馬さん時代のフロンターレは「雰囲気が悪いわけでは決してないが、どうも活気がない」って状態だったのではないでしょうか。そして、同じ空気を吸う中で強化部がそのことに違和感を抱き、解任へと踏み切ったのではないか、なんて想像をしています。

そう考えると、後任が風間八宏というのは絶妙なチョイスですよね。風間さんは基本的に陽性の人物っぽいですから、きっと、そういう「逸脱」に対して寛容というか、それを逆に面白がって、助長したりして、チーム内の色んな凸と凹がうまいこと科学反応を起こし、チームに「活気」をもたらしてそうですもんね。

ところで、風間さんといえば筑波大学の監督だったわけですが、大学の体育会の監督って、部活の独自資金(寄付なりスポンサードなり)で、ギャラを賄っているんですかね。法人としての大学のお金で雇っているんですかね?

前者ならば、やはり濃密な人間関係が絡んできそうですし、後者ならば、理事会なり何なりを介した判断が必要になるでしょうから、そうそうフットワークが軽快だとは思えない。もし、相馬さんの解任が決定して初めて、風間さんにオファーが出て、それから1ヶ月も経たないうちに辞任したとしたら、相当の波風が立ったと思われます。

一方で、風間さんはスポルトにて「今回の就任はフジテレビと筑波大学の理解があって初めて成立した」と円満移籍を強調していました。仮に、風間さんの謝辞が事実に基づいているとするならば、フジテレビも含めて、相当の根回しがあったんじゃないかな、とか思うわけです。

つまり、年度が変わる以前から非公式に「場合によっては、そういうこともあるよ」ってフロンターレが風間さんに打診していた可能性もあるんじゃないか。そして、風間さんも、その内意を「大人の作法」で筑波大学なりフジテレビなりに伝えていたのではないか、とか考えたり考えなかったたりします。

仮に、そういうことがあったとしたら、そういった面も含めて、川崎フロントのリスクマネジメントは素晴らしいな、と。その辺の「推論」も含めて、フロンターレの対応を「上の上」としておきます。