南米選手権参加辞退の周辺をウロウロと…

                                  にほんブログ村 サッカーブログへ
にほんブログ村

先日、ラジオを聴いていたら、今回の震災の被害総額、国民1人あたり20万円の寄付をしないといけない額なんだそうです。もちろん、ワタクシを筆頭に、「ポンッと20万も払えないよ」って人も少なくないかと思われます。

というわけで、長い期間にわたって、少しずつ、いろんな形で東北のために富なりエネルギーなりを消費し、結果として20万円分くらい頑張ったってことになれば良いかな、なんて考えている今日この頃、皆様、いかがお過ごしでしょうか。

皆さん、新幹線って乗りますか?

冬場の東海道新幹線って、稀に遅延が出ますよね。東海から関西にかけての地域で雪が降ると、なかなかの確率で遅れます。で、実際に徐行しているのは、常に米原岐阜羽島間。「リニアモータカー作る前に、この区間を地下化しろよ!」って主張したいのはワタクシだけでしょうか?

琵琶湖の南から東にかけての地域って、よく大雪が降ります。「関西」って感覚で行くと思わぬ荒天にビックリします。いやですね、数年前の冬、と言っても2月の終わりとかですが、信長好きの友人に誘われて安土城に行ったのです。じゃ、吹雪ですよ、これが。

でも行ってしまったものは仕方ない。雪化粧の安土城に登城します。そうしたら、「伝秀吉屋敷跡」みたいなのがあって、そこの案内板に「礎石が残っているので御見物あれ」的なことが書いてある。あの、、、絶賛積雪中なわけですよ。「礎石?見えねえし!」ってことになるってもんですよね。

そうです、本エントリーのテーマは「礎石」です。

やっぱり「礎石」って大切だと思うのですよ。礎石があっての「伝秀吉屋敷」であって天守閣。礎石がグッラグラの天守閣で籠城戦をするつもりにはなれません。

例えば東京タワーに行ったとしましょう。そうしたところ

「大展望台は強度に不安があるので立ち入り禁止」

と、なっていたとして、

「だったら、もう一コ上の特別展望台まで登れば良いんじゃね?」

とは思わないですよね。

電波塔といえば、最近では東京スカイツリースカイツリーに関しては、震災の一週間後に目標とする高さ634メートルに到達したそうですね。震災にも負けず工事が続行されたということです。なぜ可能になったか?読売新聞のweb版を引用します(http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110318-OYT1T00555.htm

「ツリーでは11日の東日本巨大地震発生直後に工事を中断し、作業員を地上に避難させた。けが人はなく、タワー本体にも影響はなかったため、14日から工事を再開させていた。」

なるほど、重要なのは「タワー本体にも影響はなかった」からですね。土台の部分がグッラグラしていたら、さしものスカイツリーも、工事は中断されていたはずです。

前置きが延々と続いてきましたが、ここでサッカーのお話に旋回いたします。

上で述べてきた、「礎石と天守閣」、あるいは「大展望台と特別展望台」、もしくは「スカイツリーの本体と工事中の高層部」の関係って、「Jリーグと代表」の関係に似ていませんか?

日本サッカー界では、最近、南米選手権への参加をめぐって微妙に議論が起きています。

協会の言い分:震災の影響で南米選手権開催中も7月にJリーグの試合を開催せざるをえないから派遣できない。

否定派の言い分:南米選手権は代表を強化するための、またとない機会だから活用すべし。

ごく単純化すれば、協会はJリーグの安定運営を重視し、否定派の視線は代表の強化にある。だから、この議論は往々にして「Jリーグか?代表か?」の問題として捉えられがちかもしれません。しかし、ワタクシ的には、「Jリーグか?代表か?」という二者択一なんて、そもそも成立しないのではないか、と思うのです。

「国内リーグあっての代表であって、Jリーグの安定なしに代表の強化もへったくれもない」というのがワタクシの見解です。それは、Jリーグの発足前における代表の国際的競争力と、Jリーグ発足後の国際舞台での活躍を見比べれば一目瞭然ではないでしょうか?

日本代表が強くなるためには、強くあり続けるためには、サッカー人口の分母が確保されなければなりません。多くの子供や若者がプロサッカー選手を目指すという状況になければならない。そのためには、表現は上品でないですが、「より多くの人がサッカーで飯を食える環境」の存在が大前提となります。Jリーグの安定なくして代表強化はない、そう思います。

例えば、天守閣が8割方完成しつつあるところで、礎石にひび割れのあることが発覚したとしましょう。そのとき、「せっかく、ここまで作ったんだから土台部分のダメージには目をつぶって天守閣を完成させよう」と突き進むのか、「残念で悔しいけど、天守閣の建築は後回しにして、場合によってはいったん解体してでも、まずはしっかり土台を固めよう」と一時停止するのか。重要なのは、Jリーグは現在、通常のサイクルを失っている状態、すなわち、弱っている状態、ダメージを受けている状態だということです。

日本サッカーは2014年で終わるわけではありません。ブラジルWCの後も、50年、100年と続いていくことでしょう。だから、我々サッカーを愛するものも、それと同じようなスパンで、「日本のサッカー界において今、大切なものは何か?」ということを考えていかなければなりません。

すでに礎石にヒビが入って不安定な状況にあるJリーグという土台に、更なる負荷をかけてまで、代表という天守閣の増築を急ぐことが、50年後、100年後における日本サッカー界の栄光を見据えたとき、果たして賢明な判断と言えるのかどうか。

50年後、100年後に2011年を振り返ったとき、「あのときムリにでも南米選手権に出てくれたから現在の日本サッカーがある」となる可能性と、「あのとき代表の前進が鈍化することを承知で、Jリーグをいち早く正常化してくれたおかげで現在の日本サッカーがある」となる可能性の、どちらが高いと考えるか。南米選手権に参加すべきか否かというのは、そういうスパンの視点で議論していく問題なんだと考えます。