清水を素材にチーム作りとは何かの周辺をウロウロとしてみました

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サウジアラビア戦の直前に、スポナビさんの他のブログを読んでいたところ、以下のような内容が書かれていました。

1月17日という日にマッチメークされているのも、なにかの運命。だから、香川や柏木や岡崎といった神戸出身の代表選手には、ぜひ頑張って貰いたい。

そういう趣旨だったかと思います。弊ブログみたく冗長に流れることのない引き締まった文章も相まって非常に感銘を受けましたし、普段はお気楽極楽なワタクシであっても、同時代人として忘れちゃいけないことがあるな、と反省したりもしました。

だからという訳ではないのですが、今回は1・17の後日談に引きつけつつ、清水エスパルスのオフシーズンの動向から考えたことを述べたいと思います。

このシーズンオフを振り返ったとき、特徴的なのは、2つのクラブに激震が走ったことです。1つは清水で、もう1つがマリノス。両クラブとも長年チームの象徴とされてきた選手を放出したことにより、サポーターや選手が激しく動揺しました。

なかでも清水は空中分解の様相を呈するに至ってましたね。長谷川監督、伊東輝を始め、ヨンセン・市川・西部などの選手が契約非更改となりました。

それだけに止まらず、藤本選手が名古屋に、兵働選手が柏に、原選手が浦和に移籍し、岡崎選手がヨーロッパに、本田選手が鹿島になんて噂が盛んに流れています。2010シーズンのレギュラーの7割方が入れ替わりそうな勢いです。

おそらくフロントとしては、0円提示をした選手以外に、ここまで多くの離脱者が出るとは想定できていなかったのではないでしょうか。

尤も、藤本選手や岡崎選手についてはシーズン中から噂がありましたので、「五分五分」くらいの覚悟もあったかもしれませんが、なかんずく兵働選手の柏移籍は衝撃的だったように思います。これで、一気に「空中分解」っていう印象が強まりました。

同じような状況はマリノスにもありました。山瀬選手や清水選手といったレギュラークラスに加えて、ミスターマリノスたる松田選手に戦力外を通達したことにより、サポーターからの抗議に晒されましたね。

ただ、マリノスの場合、田中選手が川崎に移籍した以外、それほど多くの選手が流出したわけではありません。田中選手も、どちらかというと、クラブの在り方に不満を持ったというより、木村監督が就任して以降は出番が減っていましたし、出場機会を求めての移籍と考えるべきでしょう。

そう考えれば、マリノスはなんだかんだで「空中分解」には至らなかった。

清水とマリノスの違いは、どこにあるのでしょうか。

まず共通点は、清水は伊東選手、マリノスは松田選手という、「クラブの象徴」とも言える選手を放出した点ですね。ただ、プロ野球ほど資金が潤沢ではないJクラブの場合、浪花節的な終身雇用は、なかなか難しいでしょう。鹿島でさえ、かつて秋田選手に0円提示を行いました。

しかし、秋田選手に戦力外を通告したときの鹿島と、今回の清水やマリノスでは、全く印象が異なります。それは何故かと言うと、あの時の鹿島は、(主力級では)秋田選手だけに戦力外通告を下したんですね。一方、清水やマリノスは、伊東選手や松田選手と同時に多くの主力級選手を契約満了にした。

この差は非常に大きいんだと思います。

伊東選手や松田選手は「クラブの象徴」、言わば〈骨〉です。そして市川選手、西部選手、山瀬選手、清水選手などは、実際に主力としてチームを動かす、言わば〈肉〉。

すなわち鹿島は〈骨〉と〈肉〉を同時に入れ替えるという判断をしなかった。他方、清水とマリノスは〈骨〉と〈肉〉を同時に交換してしまった。そういう意味では清水とマリノスは、同じ穴のムジナだと評価できるでしょう。

しかし反面、清水とマリノスには、相応の相違もあります。それは清水が監督も替えたのに対し、マリノスは木村監督が続投になったという点です。

先の〈肉〉〈骨〉に引き付ければ、監督はチームの〈脳〉ですね。要するに清水は〈脳〉〈骨〉〈肉〉の全てを入れ替えてしまったわけです。それでは継続性も何もあったこっちゃないですし、残された選手に不安が広がる

のも当たり前のことでしょう。

こう考えてくると、サッカークラブには、3つの柱があると言えそうです。

1に、監督。

2に、クラブを象徴する選手。

3に、実労でチームに貢献する主力選手。

そして、一どきに交換可能なのは、上の3要素のうち、1つまでだということを、今回の清水とマリノスは証明したように思います。特に3つともの同時入れ替えは、チームの継続性の放棄である、と。

では、清水のフロントはなぜ、そのような判断を下したのか。本人たちには、いろいろと言い分があるのでしょうが、個人的には、それは「現実逃避」だと考えます。

話は飛びますが、かつて阪神大震災のとき、多くの若者がボランティアに駆けつけました。しかし、モノの本によると、その若者のうちの相当数は、「震災直後の神戸」以外でのボランティアには何ら興味を示さなかったそうです。そして、そういう人々の多くは、現実に悩みを抱えていたとのこと。

その本の著者さんによると、「震災直後の神戸」でのみボランティアに参加した若者は、「震災直後の神戸」に、「リセットされた世界」を見たんだそうです。そして、そういう「リセットされた世界」に身を投ずれば、自分自身もリセットできるんじゃないかと無意識的に夢想した、と。

でも、確かにボランティアとしての功績は素晴らしいのですが、だからといって、それによって新たな自分に生まれ変われるかとなれば、そんなわけはないですよね。

自分を変えようとすれば、自分の足りない点を模索し、その改善のために1つ1つ試行錯誤を繰り返す。1つの改善が達成したら、更なる足りない点を探す。或いは足りてる点を更に伸ばすべく、新たな試行錯誤をする。そういう気の遠くなるようなヘヴィな作業を辛抱強く積み重ねていくしかないわけですね。

それはサッカーのチーム作りでも同じなんだと思います。

このように考えてくると、清水のフロントは、そういう地道でハードな作業から目を逸らして、「チームをリセットすれば問題点は一挙に解決するんじゃないか」という現実逃避に走ったように思われるのです。

したがって、この冬の清水フロント陣には、個人的にネガティブな印象を持っています。

勿論、清水フロント陣にはフロント陣なりのビジョンを持っているはずなので、後に振り返って、「改革元年」と評価されるシーズンになる可能性もあるわけですが、、、

ともあれ、今回のエントリーは主観的な思い込みですので、シーズン終了時にはエスパルスが大躍進していて、ワタクシ、赤っ恥状態かもしれないですし、そうなってくれた方が、一サッカーファンとしては有り難かったりもします。

そんなこんなで、本日は2球続けてストレートを投げてみました。んが、おそらく次回以降は再び通常営業モード、行き先はボールに聞いて貰うしかない暴投気味の変化球モードに戻ります(汗)