天皇杯、鹿島vsFC東京の周辺を鹿島目線でウロウロと…

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まさか、鹿島の試合を5日間で2回も生観戦するとは。これは、なかなかの事件です。ワタクシ的に。

はるばる小旅行をしなければならない鹿スタと違って、試合開始1時間前に家を出れば、途中でラーメン屋さんにも寄れる国立競技場。今回は、かなり心境的にラフな感じでスタンドに駆けつけました。

5日前と異なるのは、ワタクシの心持ちだけではなく、鹿島の戦術も同じでした。開始早々、一気に攻め立てた名古屋戦と打って変わって、この日は、いつもの鹿島でした。まずは相手の出方を窺いつつ、虎視眈々と隙を探す、そんな感じ。

だから、むやみやたらと攻撃に手数をかけたりしない。必要な時に、必要十分な人数でアタックを仕掛ける。少ない頭数でシュートにもっていけるのであれば、それに越したことはない。できれば前線の4人で攻めきりたい。いつもの鹿島ですね。

その証拠に前半はミドルシュートが多かった。特にシュート技術に定評のある野沢や、前の試合でミドルを叩き込んだ大迫なんかは、積極的に足を振り抜いていました。

ただ、体が温まってくると、ボランチやSBも攻撃に厚みを持たせにかかり出します。

特に目についたのが、フェリペ選手と宮崎選手の左サイド。この2人の関係って、なんだか不思議ですよね。

2人でワンツーしたりとか、そういうパス交換は余りない。では、相性が悪いかと言えば、そうでもない。むしろ距離感とかは、かなり良い。

なんと言うか、各々がそれぞれ単独で仕掛ける。で、ダメだったときのために、もう1人は、それをフォローできる位置に必ずいる、結果、なんとなく2人が上手く絡んでいる感じになる。みたいな。

また、逆側の右サイドも、なかなか興味深かった。東京から見たら左サイドなわけですが、ここにはリカルジーニョが入っていました。

東京は、2列目の右サイドに梶山選手が入っていたこともあり、右で密集を作って、左にスペースを生み出す。その左サイドのスペースでリカルジーニョを走らせる。みたいなパターンを数多く演出していました。狙ってか、偶々かは知りませんが。

ともあれ東京の右サイド、鹿島の左サイドに密集が出来ているわけですので、反対側のサイドは攻めるのがリカルジーニョ1人ならば、守る方も新井場1人となる。簡単に言えば、新井場選手はマンツーマンでリカルジーニョ選手を止めなければならなかったわけです。

で、リカルジーニョ選手には、「パスはクロスのみだが精度は低い」「シュートが枠に飛ばない」「ドリブルをしていて途中で時々、心が折れる」って特徴があるのですが、一方でスピードに乗ったときのドリブル突破は迫力満点だったりします。

そうなると新井場選手の対応は、自ずから絞られてきます。リカルジーニョ選手がスピードに乗れないようなポジショニングをすれば良い。そして、そういうオフザボールの段階でのポジション争いとなれば、よりクレバーな方に軍配があがる。

ええ、新井場選手が、しっかりとリカルジーニョ選手を抑えていたと思います。

さて試合は、FC東京が前半のうちに先制して、鹿島は追い掛ける立場でハーフタイムを迎えます。

すると、どちらかと言えば「我慢の人」という印象の強いオリベイラ監督が珍しく後半開始とともに大岩選手に代えて青木選手を投入しました。

青木選手はボランチに入り、中田浩二選手がCBに下がります。攻撃の起点の1つが一列低い位置になったわけですね。逆の言い方をすれば、中盤の起点が1つ減りかねない布陣となったわけです。

しかし、その点は野沢選手が前半に中田選手が担っていた「起点になる」という役割を肩代わりすることで相殺されました。むしろ、より高い位置で、より短いパスを出す野沢選手が起点になったことで、鹿島の攻撃は、前半以上に分厚いものとなりました。

ロングパスを得意とする中田選手が起点となればカウンター主体になり、ショートパスに持ち味のある野沢選手が起点になるとポゼッション重視となる。少し考えば極めて合理的な変化ですので、オリベイラ監督の意図も、その辺りにあったと考えて良さそうです。

オリベイラ監督は、その後、フェリペ選手に代えて本山選手も投入します。そして、フェリペ選手より、高い位置で長い時間、しかも多くの回数、ボールに関与するモトヤンがピッチに立つことで、鹿島のボール保持率は、いっそう高いものになりました。

試合後のオリベイラ監督のコメントにもあるように、本山選手は今年、コンディション調整に随分と苦労したようですが、前線でアクセントになりつつ潤滑油になる辺りは、さすが10番ですね。

試合は、一部の短い時間帯を除き、ほぼ一方的な鹿島ペースになります。そして、勢いそのままに大迫選手のゴールで同点に追いつきました。これで数字上は「振り出しに戻る」なわけですが、実際は鹿島に分があるのは明らかでした。

試合後半、疲労が蓄積すると、脳内の酸素量が減少し、冷静な判断力が奪われるそうです。そうなってくると、「頭を使わなくても体が勝手に反応する」チームの方が圧倒的に有利なはずです。

そうなってくると、Jリーグ開幕以来、一貫した信念でノウハウを蓄積してきたチームと、試行錯誤の途中で、さらにシーズン半ばに新たな試行錯誤を余儀なくされたチームの差が出てきます。

結果は延長戦終了間際の劇的な勝ち越しゴールでしたが、印象的には、酸いも甘いも噛み締めた大人(鹿島)が青春真っ盛りの若僧(東京)をたしなめた、そんな風に感じました。

何はともあれ、これで鹿島はACL出場権死守に、また一歩、近づきました。このまま決勝戦も勝ち抜けるのか、がぜん注目ですね。お疲れサマンサ。