今年は、「がっつり天皇杯を見よう」キャンペーンを絶賛展開中です。ええ、ワタクシの心の中限定ですけど。そんなわけで、少し脚を伸ばして鹿島スタジアムにまで行って参りました。
どうせ君は来ないんだし、君と僕の答えもどうせ出ないんだし、さようならを決めたことはどうせアナタのせいなんだから、サッカーでも見ないことには、やってられないっすよね。
この試合、鹿島の「らしさ」と「らしくなさ」の両面が出たように思います。ちなみに、最後の方で述べますが、「らしくなさ」はポジティブな意味での「らしくなさ」です。
「らしさ」から。
ご存知の通り、鹿島は前半の早い時間帯に興梠選手のゴールで先制しました。このシーンで興梠選手は、一端、裏に抜け出して、相手に対応されると、少し外に流れるようにドリブルしました。ゴールからマイナス気味に体重のかかったドリブルをしているわけですから、一般的にはシュートチャンスを逃してしまったねって感じになります。でも、興梠選手って、こういうシュートが上手ですよね。「あれっトラップ、ミスった?」ってところから、自分の形に持ち込んでつつがなく決めてしまう。まさに興梠選手の「らしさ」が出たゴールだったと言えるのではないでしょうか。
そして鹿島の「らしさ」は、このゴールの直後に、より象徴的でした。ゴールが決まって、名古屋がキックオフするまでの時間、ずっと小笠原選手が大迫選手に、なにやら指示を出していたんですね。小笠原選手が発揮する、この辺りのキャプテンシーは、そのまま鹿島の強さそのものと言えるでしょう。
さらに鹿島の「らしさ」は、名古屋の反撃により、後半になって追いつかれたときに発揮されます。同点ゴールを決められた直後、少し相手の集中力が緩んだスキをついて、大迫選手が見事な勝ち越しゴールを決めたんですね。
大迫選手は、それまでの時間、良い形でボールを貰いながらも、なかなかシュートまで持ち込めず、スタンドからは「シュート打て!」とか、「君なら出来るよ!」とか、ともかく見ている側からすればストレスフルなプレーが多かったんですね。それが勝負所となると迷わずシュートを打った。まさに鹿島の遺伝子が大迫選手を動かしたと言って良いでしょう。
大迫選手には、もう1つ、鹿島「らしさ」全開のプレーがありました。それは、後半の残り10分くらいのこと、野沢選手に代わって青木選手が投入されます。
基本的に「守れ」のサインであることは明快なんですが、時間的には、ベタに守備モードとなるには躊躇を覚えるタイミングです。しかし、大迫選手は、なんら戸惑うことなく、カウンターに抜け出した後、ボールキープを選択します。そのプレーを合図として、鹿島は一気に、時間を殺しにかかります。鹿島の最も得意とするパターンに持ち込んだわけですね。この辺のことについても、大迫選手が鹿島の「らしさ」を体現していたように感じました。
次に鹿島の「らしくなさ」について。
なにが、「らしくない」って、興梠選手の先制点が前半の7分だったことです。いや、別にカウンターモードで点を取ったなら、話はわかるんですよ。でも、興梠選手のゴールって押せ押せモードに乗って奪ったゴールなんですね。
つまり鹿島は開始早々、一気呵成に名古屋を攻め立てていたんです。これは全く鹿島「らしくない」。鹿島と言えば、相手の出方を窺って、ノラリクラリとリズムを作っていくというイメージが強いのですが、その鹿島がフィンケのレッズみたく、キックオフから総攻撃ですよ。ちょっとビックリです。
もう1つ「らしくなさ」がありました。
それは岩政選手がアクシデントで前半のウチに退いたことです。別にそのこと自体に問題はないのですが、交代で入って来たのは、この日、引退セレモニーのあった大岩選手。ドラマチックにも程があろう。
鹿島の強さって、「したたかさ」とか「試合運びの上手さ」とかをベースとした「憎たらしい強さ」だと思うんですね。つまり「マンガチック」からは最も遠いところにいる。それが、漫画家でも躊躇うような感動的な展開が用意された。
全く以て、鹿島「らしくない」。
さて最後に、今年、鹿島が苦戦した理由について、この試合から述べてみたいと思います。ごく単純な問題として、運動量が足りなかったのではないかと感じたんですね。
例えば、後半に入ると新井場選手は殆ど攻撃参加できなくなりました。オーバー30の新井場選手の場合は仕方ないのですが、問題はフェリペ選手も同じような時間帯にヘロヘロになっていたこと。また、野沢選手は、運動量豊富にチームを回転させるというより、隠れていて突然出てくるって選手。
そうなるとスペースを埋める役割は、ボランチの中田選手と小笠原選手に委ねざるを得なくなる。しかし、この2人も後半は目立たなくなってました。もちろん、取りに行くときのダッシュ力などは全く衰えず、驚嘆すら覚えたのですが、時間とともにボールに絡む絶対数が減ったように感じました。
おそらく、これは、オフザボールでのポジショニングにおける運動量が減少した結果ではないかと思います。前半は「アソコにもココにも小笠原と中田」だったのが、後半には「そりゃソコは2人が頑張るところだよね」って感じになった。こういう現象は全ての選手に発生するんでしょうが、そうなる時間が、15分くらい早過ぎるように思うのです。
そう考えると、青木が2人からポジションを奪い返せるかどうかって、実は鹿島の命運を握っているんじゃないか、なんて考えてみたりするところです。
何はともあれ、大岩選手にとっては素晴らしい1日になったのではないでしょうか。お疲れサマンサ。