ケルベロスの進撃、結果はチワワ〜ジェフ千葉vsブラウブリッツ秋田(4/21)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

□ポートタワーダービー

秋田のソウルフードといえばきりたんぽでも稲庭うどんでもしょっつる鍋でもなくババヘラであることは、もはや現代社会の最前線を生きる我々の常識になっているかと拝察しますが、ワタクシが初めてババヘラを食べたのは、秋田駅のお隣(だったかな?)の土崎駅からまあまあ歩いた先にあるセリオンという港の公共施設(道の駅的な)においてです。そして、セリオンのメインコンテンツは、巨大な灯台の役割も果たしてる(のかな?)ポートタワーだったりします。

翻って、千葉、あるいは、蘇我、もっと言えば京葉線ですが、千葉→蘇我京葉線の連想ゲームで想像されるように、千葉みなと駅ですよ。千葉みなと駅から10分〜15分ですかね、ありますよね、千葉ポートタワー。というわけで完全なるポートタワーダービーなわけですが……そもそもポートタワーの元祖は神戸なのかな?まあ、とにかくポートタワーダービーです。

 

□9位vs11位

秋田新幹線を東京駅で総武線快速に乗り換え、グリーン車で乗り込んできた(?)秋田は、ここまでのところ、4勝3分3敗で暫定の9位です。一部の秋田サポーターがそろそろ「吉田監督には限界がある。解任しないと更に上にはいけないのだ!」とか騒ぎ出す頃合いでしょうか。実際に解任してしまったら、「そういや、もともとJ3でもさほど圧倒的なクラブ規模じゃなかったんだよな、、、」と現実を突きつけられるのでしょうけど。

迎え撃つ千葉はここまで4勝2分4敗、暫定順位は11位です。昨シーズンの終盤は圧倒的に絶好調だったので、今シーズンには大いに期待が膨らんだのですが、歴史を紐解くと関塚さんであったり、エスナイデルであったり、尹晶煥であったり、前のシーズン終盤が絶好調だと、翌シーズンは期待ほどでもないってのを繰り返してきたのがジェフユナイテッド市原・千葉というクラブ。一喜一憂せずに見守るしかありません。

 

□鉾盾状態

というわけでピッチに目を移します。まずは秋田ですが、試合前にピッチを入れ替えていたのでスタンドで感じる以上の風が吹いていたものと思われますが、その影響でしょうか、秋田のストロングであるロングボールでの優位性を前半はあまり発揮できていませんでした。持ち前のハードさが裏目に出て、前半の早い時間帯に立て続けにイエローを頂戴したこともマイナスに作用したのかもしれません。

一方で千葉ですが、4番の田口、44番の品田という444ダブルボランチが存在感を示していました。田口と品田、名前の漢字が正方形だらけじゃないか。両者の役割分担としては、品田はロングキックでサイドチェンジするなど、シュートから3手前のパスを出す感じで、田口は品田と3人のアタッカーをコネクトする、シュートから2手前のパスを出すようなイメージでしたね。で、相手ゴールキックの際のセットを見る限り、確実にシステムは4231なのですが、攻撃においては田口が左前に出て、横山が右下に下がる433になります。

前半の流れとしては、とにかくジェフが一方的に攻めたてていました。各駅停車のパスでは絶対に相手は崩れないという前提を共有しているのでしょう、精度を高めたミドルパスで秋田守備陣を揺さぶりますが、そこはハードワークの秋田です。たとえ椿や田中和樹がラインブレイクしたとしても、次の瞬間には秋田の全選手が帰陣を完了させていて、かつ、同時に2ラインによるブロックも構築しおわっている。これを攻略するのはなかなか難しい。スコアレスで前半を折り返しました。

 

□頭が大混乱

試合は後半の開始とともに大きく動きます。蜂須賀が47分に本日2枚目のイエローカードで退場、前半から圧倒的に攻めたてられていた秋田は、いよいよ苦境に陥ります。というか蜂須賀、2枚目って…二枚目なのは顔面だけにしておけよ、と敢えて若者には通用しない“二枚目”という死後を使ったわけですが、そんなことはともあれ、数的優位になった千葉、さらに一方的に攻め続けながら、スコアを動かせません。というよりも、とことん小森のシュートが決まらない。「そりゃサッカーやってたら、こういう日もあるよね」っていうパターン。

それでもジェフは田口・日高の左サイドを基点にチャンスを量産。ひっきりなしにチャンス。願わくば右SHに米倉みたいな競り合える選手がいたら……って空気が流れ出したところで、そのような形、左からのクロスを右で小森?高橋?岡庭ではないよね?が競り勝ち、最後は田口が押し込んでジェフが先制します。

こうなるとジェフは余裕綽々、秋田は全く“らしさ”の片鱗さえも出せないまま時計の針が進む。秋田がようやくシュートチャンスを迎えたのは、80分が過ぎてからでした。とはいえ趨勢に大きな影響のないまま、秋田はSBを削ってアタッカーの半田を投入。だからといってチャンスが増えるわけではなかったのですが、秋田にとって本日2度目のチャンスで、その半田が決めてしまうのだからサッカーはわからない。とはいえ別に秋田の押せ押せにはならない。にもかかわらず、秋田の本日3度目のチャンスでPK獲得ときたものだ。ジェフ的には絶体絶命。しかし、ここで守護神藤田が立ちはだかり、PKをストップします。ジェフサポーターのボルテージは最高潮!ってなかで秋田が蹴ったコーナーキックが吸い込まれるように千葉のゴールへとネットイン……もはや、わけがわかりません。テンションやら試合の流れやらの、予兆の全くない乱高下に耳がキーンッどころではない。

……結果的に千葉としては90分間、圧倒的に攻めたて続けながら、なぜかタイムアップ時のスコアでは負けているという試合になってしまいました。えーと、うん、言葉が見つかりません。ただ一つ言えることは、ジェフがサッカーの神様に嫌われたというか、サッカーの悪魔に超絶片思いされたということです。くわばら、くわばら。

問題は先制されてからのダメっぷりかも〜浦和レッズvsガンバ大阪(4/20)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

 

□徳島には頭が上がらないダービー

この組み合わせは、いまだに“西野朗ギド・ブッフバルト”時代の残り香を嗅ぎとってしまい、ついつい“東西横綱ダービー”って第一印象を持ってしまうのですが、もはやそういう時代でもないですよね。そういえば、かつてガンバが「今シーズンから勝った試合の後はやろう!」と始めた“ワニナレナニワ”を埼スタのセンターサークルでやったら、ホームチームへの挑発と受け取られ大騒動になったってことがあったなあ。

近年は両チームとも「そろそろ次の黄金期が来ても良いんじゃないか?」って感じで欧州系の監督によるチーム作りを進めてますね。数年前に浦和はリカルド・ロドリゲスを招聘して新路線の最初の一歩を踏み出しましたし、ガンバは現在、ダニエル・ポヤトス監督のもとでスタイルを構築中。……うん?そうか、なるほど、この対決は「徳島には頭が上がらないダービー」だったんだな。

 

□ともに最悪ではないが寂しい成績

さて、東海道本線で新大阪に出たあと東海道新幹線武蔵野線を乗り継いで埼スタに乗り込んできたであろうガンバ(東京駅からはバスだと思うけど)は、ここまでのところ3勝3分2敗で10位。シーズン序盤は好調でしたが、少しトーンダウン。それにしても今シーズンの宇佐美の覚醒には目を見張るものがありますね。ネット記事によると、足首の状況が悪かったのだけれど、その対策として体重を落としたことがプラスに働いているらしい。

迎え撃つ浦和は3勝2分3敗の11位。最初の2〜3節は新監督のヘグモさんをネタ監督扱いする声もありましたが、セホーンレベルではなさそう。とはいえ、今ひとつ強いのか弱いのか分からない。というのも連勝も連敗もあんまりなくて、勝ちと負けと引き分けとが等間隔でコンスタントに記録されているからでしょうか。「ここまでの浦和ってどう?」と聞かれたら「勝ったり負けたり引き分けたりだね」としか答えようのない星取表になっております。

 

□そんなん、涙がこぼれそうやん

というわけでピッチに目を移します。まずはガンバですが、両SHが大きく幅を取ります。なのでポジショナル的5レーンなのかと思いきや、そういう雰囲気ではない。攻撃のときは幅を取ったSHと2トップが一列になる424な感じ。ワイドでは数的優位を作るというより単騎突破。最終ラインのボール回しも、一撃必殺の裏抜けロングパスを出すためというより、ボランチをフリーにするため、といったイメージでしょうか。

それに対して浦和は、典型的な欧州トレンド。もはや“ポジショナル”って言葉を強調すると、却って陳腐になるというか、事を単純化してしまいそうですが、序盤からセカンドボールの回収率で浦和がガンバを圧倒していた。ベップのチームが強いときは、押し込んだ状態で勝手にセカンドボールが味方の足元にこぼれてくる感じになりますが、そういう、ボールがこぼれるところに人がいるって仕組みが着実に熟成されつつあるように思います。

ちなみにこの試合、浦和も両ワイドアタッカーが攻撃の有効な切り口となっていましたが、それぞれ右が前田直輝で左が中島翔哉ヴェルディユースの9番と10番やん。そんなん、涙がこぼれそうやん。さらに言えば、ガンバでは鈴木徳真が巧みに中盤をコントロールし、浦和では左SBにコンバートされた渡邊凌磨が中島翔哉と大久保のコンビプレーをフォローアップしていた。鈴木徳真と渡邊凌磨、前橋育英の二枚看板やん。そんなん、涙がこぼれそうやん。ってな前半の戦いでした。スコアは動かず。

 

□各駅停車遅攻の一気呵成

後半に入っても浦和のリズムが良い。ISHに入った大久保と伊藤がどんどんとチアゴサンタナを追い越していく。大久保の小刻みなドリブル突撃も良いし、伊藤のダイナミックなフリーランも出色。何よりも、彼らが飛び込んでいくスペースにグスタフソンがスコンスコンと縦パスを差し込んでいくのが凄い。さすがはヘグモの申し子。必要な場面には必ず彼が絡んでいく。ページをめくるといつもグスタフソンがそこにいた。ノートの落書き、いつも君がそこにいた。レイジールーズブギー。ちなみに、この日は岩尾がベンチにも入ってなくって、岩尾とグスタフソンの関係性については拝見できませんでしたが、途中から大久保の位置に安居が入ってきて、その安居とグスタフソンの役割分担を見ていたら、なんとなく岩尾との関係性も伝わってきました。

一方でガンバは劣勢。とにかく縦に遅いんですよね。とてもヨーロッパ人が率いているチームには見えない。「90年代から二千00年代の日本の442サッカーって、こんな感じだったなあ」と懐かしさがこみ上げてくるような各駅停車的遅攻。ボールをペナルティエリアまで運んだときにはバッチリ相手のブロックができている風景、久々に見た気がする。……なのですが、そんなガンバが決勝点を決めるのだからサッカーは奥深い。どういう事情かヘグモ監督はショルツから佐藤へとCBを入れ替える。CBの選手が途中出場に慣れているわけはなく、その佐藤が危険なシチュエーションで痛恨のボールロスト(追記:佐藤のミスと思ってたら、伊藤のミスだったみたいです)。奪ったガンバは一気呵成でゴール前に押しかけて、そして勝負強く坂本が決めきりました。

先制されてからは浦和がガクンと落ちる。そのままほとんど無抵抗のままタイムアップを迎えました。そりゃ、浦和サポじゃなくてもブーイングを浴びせかけたくなりますよね。浦和的にはそんな敗戦でございました。

 

石にしがみついて勝ち点を持ち帰る〜横浜FCvsいわきFC(4/7)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

□スポーツサプリメントvs給食

いわきFCといえば泣く子も黙るアンダーアーマーですよ、厳密にはアンダーアーマーの日本総代理店たるドームですけど。つまりアンダーアーマーとドームの関係は、バーバリー三陽商会みたいなもんなのか?ともあれ、いわきFCは「ドームのノウハウを生かしたフィジカルトレーニングを主体とした練習に特徴があり、選手全員が専門の栄養士が管理する食事を原則3食取り、サプリメントの供給を受ける」(WikipediaいわきFC」の項より引用、閲覧日2024/4/7)という体制で躍進してきました。

ただ、そういう部分では横浜FCも負けません。実は神戸以上にオーナーの介入で引っかき回されている感が強い横浜FCの親会社は給食大手のLEOC。フィジカルトレーニングとかサプリメントとかはともかく、専門の栄養士が管理する食事では負けません…たぶん……はず。そんなわけで、今回の対決は「スポーツサプリメントvs給食」ダービーということになります。

 

□安定の田村と安定の四方田

さて、特急ひたちを上野東京ラインに乗り換えて?乗り込んできたいわきですが、目下、3勝3分2敗8位、悪くないですね。安定の名将・田村さんですし。ライセンスの関係で一時期、村主さんが指揮を取っていて、村主そんは村主さんでそこまで悪くなかったと思いますけど、安定の田村さんが安定の成績を収めています。

迎え撃つ横浜FCは4勝2分2敗の4位。下平さんがJ1に上げてからは、すっかり「J1とJ2のエレベータークラブ=J2としては強豪」というポジションが板についてきました。特に四方田さんの就任以降、横浜FCが絶望的に低迷したのは、おそらくオーナーか誰かの気まぐれで何故かJ1昇格に導いた四方田さんが指揮権を取り上げられて、監督としてはなんの実績もないハッチソンに実権を与えていた数ヶ月間だけですよね。四方田さんもまた、田村さんと同様に安定の四方田です。

 

□わりと似た者同士?

というわけでピッチに目を移します。まずいわきFC。前々から感じてることですが、いわきFCって別にフィジカルのハードさ、ガタイの良さを前面に押し出すサッカーってやってないですよね。体感の良さが生きるって場面は前線の選手がハイボールを競り合う時などに散見しますけど。特にこの試合は横浜FCのンドカがラインを深めにとっていたこともあって、前線の選手が競り合いから攻撃を始めつつ、アタッキングサードで横パスを出したり、西川が横方向にドリブルしたり、むしろ繋ぐ傾向にある。

逆に横浜FCいわきFCのラインが異様なまでに高いのと、福森という極上の砲台を有することによって、一発で裏返して、そのまま一直線にゴールに向かっていくというシーンが目立ちました。もちろん、必殺ロングパスを出すために低い位置で華麗にパスワークを発動させてはいましたけど。尤も、目立ったという意味では、高速カウンターよりも、山根と村田という両ワイドでしょうか。なんせ二人ともしっかりゴールドな金髪ですからね、目立って仕方ない。

試合は前半から動きます。均衡を破ったのはいわきFC。大迫塁がFKから低弾道クロスを蹴り込むと、それが直接ゴールインしました。大迫塁、いわきFCでは左のWBなんですね。とはいえ横浜FCも引き下がらない。直後のキックオフから一気に攻めたてて、攻め直すことなく伊藤翔が同点ゴールを決めました。いやあ、かっこよかったですね、伊藤翔のガッツポーズ。ということで1ー1の同点のままハーフタイムを迎えました。

 

□YMCAみたいな

後半の開始とともにいわきは大西に替えて山下を投入。どうでしょうか、あるいは山下をアンカー、山口と西川をISHとする逆三角形にしましたかね? なんとも微妙な感じでしたが、ひょっとしたらISHに下がっていたかもしれない西川が大チョンボ。自陣営真ん中で横パスをカットされるという、いっちゃんやったらアカンやつをやってまう。奪った三田がその勢いのまま勝ち越しゴールを決めました。

しかしいわきFC先制直後に横浜FCが追い付いたように、横浜FC勝ち越しの直後にいわきFCも追いつきます。加瀬がPKを獲得。それを照山が決めて同点となりました。そうか、CBがPKを蹴るのか。そして、加瀬、「かせ」という名字は加勢大周以来だな。いや新加勢大周か……なんて感傷に浸っているうちに試合はオープンな展開になります。オープンな展開といっても前半からずっとオープンな展開だったので、やってる内容はさして変わらないのですが、各選手の動きが落ちる分、やってる内容は同じでもちゃんと後半感溢れるオープンな展開となりました。

その中で横浜FCは切り札として投入したカプリーニがじわじわと利いてくる。なんやかんやでシュートチャンスまで持ち込む頻度は圧倒的に横浜FC。しかし、田村監督に鍛えられたいわきFCはとにかく我慢強かった。最後まで秩序が乱れなかった。そんな選手たちにサポーターはYMCAみたいなチャントで後押し。いわきFCが石にしがみついて勝ち点を持ち帰った試合と言えるかと思われます。

 

健勇と美馬がイチャつく〜大宮アルディージャvsFC大阪(4/6)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

□「新旧3交代制の町」ダービー

朧気な記憶ですが、G大阪とC大阪では“大阪”の意味合いが違って、ガンバの“大阪”は「大阪府」であって、セレッソの“大阪”は「大阪市」みたいなことがあったように思いますが、ではFC大阪はどうなるのか?というより、FC大阪の場合、大阪というか東大阪ですよね。関西の友人に聞いたところ、東大阪というのは“郊外”という印象があり、かつ、町工場が多い的な話でした。「つまり大田区みたいなこと?」と聞いたら、「方向性的にはそんな感じ」と聞かされました。

それをいえば四半世紀前の大宮だって、たぶん似ていて、現在の鉄道博物館はJRの車両基地か何かで、そこで働く工場労働者の皆さんで賑わっていたらしい。例えば大宮で知る人ぞ知る「伯爵邸」という24時間営業の喫茶店がありますけど、それは、3交代制で働く方々に来てもらうために24時間営業を始めたとかなんとか。要するに、この対決は「新旧3交代制の町」ダービーということです。

 

□両チームの現状

さて、東京駅から上越新幹線か何かに乗り換えて乗り込んできたFC大阪ですが、目下、好調。3勝4分の無敗で3位です。率いるのは大嶽直人さん。女子サッカーくノ一を率いた名将ですね。鹿児島でも初年度は良かった。2年目は途中解任されて、新監督のもとでJ2に昇格したので、ついついネガティブな印象を持ちがちですが、2年目もそこまで悪い成績じゃないんですよね。なかなか評価が難しいところです。

迎え撃つアルディージャは4勝2分で、1試合消化が少ないながらの2位です。前節では順位がだいぶ下の北九州に引き分けでしたので、開幕ダッシュ的な部分は一段落しつつあるのかもしれませんが、杉本のトップ下、攻撃のタクトで躍動する小島など、適材適所を合理的に履行する長澤徹監督の手腕は、これまでのところ見事です。

 

□ピッチ上の両チームと前半

というわけでピッチに目を移します。まずFC大阪ですけど、木匠がフリーマン気味にうまくビルドアップの縦パスを引き出しますね。ちなみに木匠、「きつい」と読むそうです。初見殺し、そりゃキツい。ついつい「たくみ」って読みたくなりません?浅野内匠頭の内匠みたいな。ともあれ、FC大阪はボールを前に運べるってターンになると、5レーンのポジショニングが整理されているのか、4バックと3バックの噛み合わせによるものか、巧みにペナ近くでフリーの選手を作りながら雪崩込むようにボールを縦に運びます。そういう時は、なかなか迫力満点。

それに対してアルディージャはこれまでの4231ではなく3バック。スポナビアプリの予想では3421でしたが、アンカーに小島を置き、ISHに石川とAシルバを並べる352。たぶん、長澤徹監督的にはもともと志向があったんでしょうね。それにしても、そうか、Aシルバはボランチか。確かにFC東京時代はそういう触れ込みだったような気がする。アルディージャは去年までのボランチ過剰から一転してボランチ不足なラインナップかと思っていたら、なるほど、Aシルバはボランチの頭数だったのか。

試合はキックオフ直後はFC大阪が一気呵成に攻めたてる。そのファーストアタックを凌ぐと、大宮が地力で押し戻しますが、まだまだ352は未成熟ですね。選手が同じ画を描けていないというか、各選手の皮膚感覚に浸透していないというか、大きなミスはないのに

何故か微妙にチグハグした前半の戦いに、大宮的にはなってしまいました。

 

□サイドの攻防

FC大阪の両SBはなかなかキャラクターがありました。まずは右SBの美馬。わりとヤンチャというか、いかにも部活をやってるヤツって感じで、健勇とやり合ってましたね。やり合っているうちに、不思議と二人はむしろイチャつき出した。まあ、部活でやり合っているヤツらって、そういう感じでしたよね。一方、左の舘野はヴェルディ産ですから、エレガントです。SBではありながら、どこか司令塔っぽく振る舞う。左足は言うまでもなく、右足でインナーからスルーパスを出せるのが、いかにもヴェルディ産。

ワイドの選手ならば大宮も負けてません。特に下口。右WBとして先発して、途中、貫の投入とともに左WBに移る。そして、切り札の泉がピッチに送り込まれると左のISHに移りました。泉が左WB。スクランブル状態になったわけですが、その直後のCKで健勇のゴールに見せかけたオウンゴールで大宮が先制します。健勇の「当然、自分のゴールですけど、何か?」という立ち居振る舞いはさすがです。それくらいでないと、競技の世界では生き残れません。

ともあれ、大宮が先制したわけですが、逆にこれで大宮は少し難しくなった。泉の入った左WBのポジションに守備の不安がある。リードした以上、どうしても重心が下がる。重心が下がると守備不安はより強くなる。対処法は泉をできるだけ高い位置でプレーさせること。ということでシステムをWボランチにした上で清水を投入して、フォアプレスに走らせ続けるという策を長澤監督は講じました。そして、この策が見事に奏功して、大宮はFC大阪の猛攻を凌ぎきることに成功。僅差ながら大宮が安定の強さを発揮した一戦だったと思います。

 

感動的なスコアレスドロー〜横浜FMvs川崎フロンターレ(4/3)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

□鶴見は誰のもの?

まあマリノスフロンターレですからね、こんなものは神奈川ダービーでしかないわけで。ベルマーレとか横浜FCとか横浜FCとか相模原とかYSCCとかには悪いですけど。なんなら、フリューゲルスやらゼルビアにも悪いですが。神奈川ダービーといえば、このカード。川崎と横浜、東海道線の駅ならばお隣同士ですよ。スタジアムでいえば新丸子と小机ですけど、最寄りに準ずる徒歩圏駅としては武蔵小杉と新横浜があって、こっちはこっちで相鉄線が乗り入れて以降は、東横線で一本です。

ちなみに一昔前ならFC東京レイソルがやるときに「金町はどっちのものだ?」というお遊びが発生したものですけど、それで言えば「鶴見は誰のもの?」と聞きたくなる。もちろん行政区分としては横浜市ですけど、鶴見といえば鶴見線の発着地で、京浜工業地帯の重工業ゾーン。町のイメージは港が見えるというより、1990年代の名作ドラマ『若者のすべて』なわけで、ほぼ川崎。いったい鶴見は誰のものなんだ?

 

□勝ち点6

さて、なんなら神奈中バスでも乗り込んで来られそうな川崎は、5試合が終わって2勝3敗の10位。ここ10年にわたる王者的ポジションのクラブとしては昨シーズンに引き続き絶好調とはいえない。ただ地力は相変わらずで、前節も多摩川クラシコFC東京をチンチンにしております。もっとも、この場合はFC東京の側に問題があるような気がしないでもないですけど。

迎え撃つ横浜は2勝2敗で11位。1試合少ないなかで川崎のすぐ下の11位。負け数が違うだけで川崎も横浜も2勝0分なんだから、勝ち点は同じ。前節は名古屋に悔しい敗戦。交代が認められなかったタイミングで決勝点が決められてキューウェルも激おこぷんぷん丸でしたね。……激おこぷんぷん丸、久々に使った言葉だな。使うどころか聞きもしなかったよ、ここ10年近く。せっかくなんで、もう一回、打ち込んでおこう、激おこぷんぷん丸。そう、激おこぷんぷん丸。

 

□新旧ポジショナル対決

というわけでピッチに目を移します。まず川崎ですが、ブレることなく初期バージョンのポジショナルです。5レーンで正しい位置取りをしつつ無限ボール回収からティキタカしていく感じ。繋ぎながら目の前の相手守備を崩して空間を作っていく。言うならば運んでから崩す。ただ、ここ数年の川崎は崩すの部分の迫力が今ひとつですよね。

それに対して横浜は、最近バージョンのポジショナル。組み立てるときはSBからの縦パスでWGがサイドを単騎攻略していく。ショートカウンターを仕掛けられるときはボランチアンデルソン・ロペスの縦抜けを導き出す。どういう位置から誰がどこに出すかが所与の前提として固定化されている。必然的にCFとWGが相手DFを上回らないと何も生まれないのですが、そこで上回れる選手を揃えられるのがマリノスです。またWGとCFの単騎攻略ですので、運ぶことが、すなわちイコール崩すになって、運べているということは崩せている、ということを意味します。

で、マリノス的な相手守備ラインを単騎で裏返す最近バージョンのポジショナルってのは、フロンターレ的なティキタカのためのポジショナルを攻略すべく磨き上げられた戦術ですので、噛み合わせとしてはマリノスが有利。実際に、前半のマリノスはおびただしいばかりの決定機を作り出していた。バーやポストやライン上や相手GKのファインセーブといったスーパー決定機だけで5回以上あったような。マリノスの決定力不足というか、あと一押しの不運によってフロンターレが命拾いをするという前半45分間でした。

 

□元チャンピオンチームの矜持

前半の終了間際に川崎は三浦が痛んで佐々木旭と交代になりました。もちろんこれは長期的には川崎のダメージですし、三浦が軽症であることを祈るのみですが、この試合に趨勢に限れば、攻撃的な三浦から、構える守るタイプの佐々木に替わったことで、川崎の守備は安定しました。前半に比べて後半はエウベルがフリーで爆走するという光景はとんと影を潜めます。そこでキューウェル監督は宮市を加藤蓮にスイッチして、エウベルを左に回します。ここで水沼ではなく加藤蓮なんですね。正直、加藤蓮はこういう戦術で単騎突破していくタイプではないような。攻撃の迫力は明らかにトーンダウンした印象です。

ここからは両指揮官の知恵比べなのですが、知恵比べだけには集中できないところもありまして。というのも、この試合、カードが多かった。つまり交錯するプレーが多く、かつ、交錯すると倒れて立ち上がれないというシーンが前半から多発します。連戦の影響か、遠目には劣悪に見えた芝のコンディションによるものか。マリノスは頼みのエウベルも痛んでしまいます。そこでキューウェル監督は迷わず村上を投入。やっぱり水沼ではないのか。

対する鬼木監督はマルシーニョを投入。この投入は成功に見えました、最初の何プレーかは。サイドの主導権を川崎が完全に奪い取りましたからね。……でもね、そのマルシーニョがレッドカードで退場しちゃうんですよ。こうなると川崎は厳しい。、、、なのですが、ここからが、さすが元チャンピオンチームの矜持。一段とボリュームの上がったサポーターの応援も含めて、勝ち点をつかみ取るため、感動的にまで戦った。いやあ、見事でしたねえ。Jリーグで得点が入らないにもかかわらず、ここまでエキサイティングな試合はそうそうないのではなかろうか。極めて満足度の高いスコアレスドロー決着でございました。

 

山口が今後の台風の目になる?〜ヴァンフォーレ甲府vsレノファ山口FC(3/30)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

□温泉地が近い盆地の県庁所在地ダービー

山梨県山口県、どちらも“山”が付く県ですが、どちらかというと対照的なイメージがあります。例えば郷土料理、山梨県は小麦を使ったほうとうであるのに対して山口県は蕎麦粉を使った瓦そば。タンパク源としては、山梨県は陸上哺乳類の馬刺しや鳥モツなのに対して、山口県は海の幸=ふぐ刺し。そもそも山に囲まれた海無し県の山梨県と、日本海も瀬戸内海もどんとござれの山口県

とはいえ共通点もありまして、県庁所在地が盆地ですね。下関でも萩でもなく、西の京都こと山口市山口県の県庁所在地。甲府甲府盆地そのもの。さらに言えば、甲府駅から二駅8分で石和温泉であり、山口駅から一駅5分で湯田温泉、県庁所在地ほど近くに有名温泉地があるところも共通している。ゆえにこの対決は「温泉地が近い盆地の県庁所在地」ダービーなのです。

 

□風雲急?

さて、新幹線とかいじを乗り継いで?乗り込んできた山口ですが、目下のところ2勝2敗2分で9位。悪くないですね。というか志垣監督、去年のシーズン途中にバトンを引き継いでから、ずっと悪くない。志垣さんだけに、かつては大木武に率いられ「たけし軍団」とも自称していたヴァンフォーレの“元たけし城”を落とすのは得意なのかもしれない、と思いきや、志垣太郎は「元気が出るテレビ」であって、「たけし城」は谷隼人でしたね。

迎え撃つホームの甲府は3勝2分1敗の4位。何度かJ1も経験していて、なんならACLとかにも出てしまったので勘違いしがちですが、冷静に予算規模を勘案すれば、しっかりやってる方かと思われます。その辺は篠田さん、FC東京時代も清水時代も安定の中位力を発揮してます。期待値が高い割には低迷しているチームを中位にまでは引き上げるというミッションはお手のものですし、うまくいけばアビスパをJ1復帰に導いて以来の昇格力をポケットの奥から引っ張りだしてくるかもしれません。

 

□大げさに言えばストーミングvsポジショナル

というわけでピッチに目を移します。まず山口ですが、基本的な考え方はストーミングですかね。高い位置で圧力をかける、あるいは、パスコースを切って奪う。そこを突破されたらリトリートして、ロングカウンターではややこしいことなどせずに、2トップに頑張らせる感じ。高い位置での守備組織がしっかりと整備されているので、甲府の最新ラインのミスを何度か誘発していました。

それに対して甲府はポジショナルです。低い位置で横につないで相手のバランスを崩して、そこからパス

3〜4本をコン!コーン‼と繋いでアタッキングサードまでボールを運ぶ。そこの運び方はよく整理されていました。キーになるのは三平。もうね、職人芸としか言いようのないポジショニング。攻撃では中盤セントラルでなぜかフリーを作れていて攻撃の起点となる。守備では高い位置でも低い位置でも抜群のパスコース消し。意地でも飛び込まず、相手のパスコースを消し去る。素晴らしいです。

前半は両チームともスコアレス。甲府は飛び道具のアダイウトンが躍動していましたね。FC東京時代の戦術ほどはスペースを与えられないので最終的には詰まってしまうのですが、単騎突破でペナルティエリアまではボールを運んでくれるし、シュートも撃つので、一人で相手の腰を引かせられます。一方の山口は広範囲に動き回る梅木と、アタッキングサード中央の相手が最も嫌がる場所でカラダを張り続ける若月という、動静2トップが魅惑的でした。

 

□山口が甲府を封殺

前半の戦いを見る限り、「甲府の方が完成度が高いのかな?」と思われたのですが、この試合、キックオフ前にエンドの交換があった。つまり、それなりに風が吹いていた。で、後半は山口に有利な風向きになった。風向きが変われば牙剥きも変わる。がぜん剥き出しの牙となった山口は、CBの平瀬がセットプレーの流れから、まるでFWのようなテクニカルシュートを放り込み、先制に成功します。

追いかける展開となった甲府は、ラッソ&鳥海に続き、秘密兵器の内藤を投入します。しかし、前線4枚のうち、すでにウタカと宮崎は退き、アダイウトンは下げづらい。しかも内藤とラッソの同時起用なので2トップということになる。となると消去法で三平が下がるわけですが、三平が下がるとどうなるか。潤滑油が失われたことで、甲府の攻撃から連動性の欠片もなくなってしまうということです。

機能性を失った甲府を尻目に山口は完璧なカウンターを発動。前がかりになった甲府を裏返して、余裕綽々に山本駿亮がダメ押しゴールを決めました。山口ってのは、この前に見た岡山と似ていて、90分のうちの85分は死んだふりをするってことができる。しかし、チャンスとみるや多くの選手がボックス・トゥ・ボックスで動いて、シュートシーンでは相手ゴール前に大挙して押しかけている。そりゃ強い。それから守備においてもアダイウトンの対応が明確だった。突進は止められなくても、右に持ち替えてのシュートだけは絶対に打たせないって守り方ができていた。やっぱり、そりゃ強い。

というわけで、今後の台風の目になる可能性を感じさせた山口が甲府を封殺するという一戦になりました。

 

摩訶不思議な岡山の強さ〜ザスパ群馬vsファジアーノ岡山(3/24)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

□晴の国vs赤城おろし

群馬の大槻監督と岡山の木山監督って同い年なんですね。ともに1972年生まれなんだそうで。逆に言うと、それくらいしか共通点が見つからなかった。そもそも気候が真逆。岡山は“晴の国”ですからね。実際には快晴率が日本一高いわけではないみたいなことも聞いたような気がしますけど、冬でも過ごしやすいことは間違いない。

対する群馬は上州の空っ風なわけで。特に正田醤油スタジアムのある前橋は“赤城おろし”の本場。冬は寒いんじゃ(敢えての千鳥風=岡山弁)。で、冬の気候の厳しさと比例するように、経営の安定性も好対照。ゴールドマンサックスな社長がレールを敷いた岡山は、比較的安定した健全経営。逆に群馬はチーム名の転変が示唆するように、右往左往の七転八倒、あるいは七転八起。そんな両者の対決です。

 

□首位vs最下位

さて、東海道新幹線上越新幹線を乗り継いで?乗り込んできた岡山ですが、今シーズンはここまで4勝1分の無敗。しかも目下3連勝中で首位に立っております。素晴らしい成績ですね。別に、1位、すなわちナンバーワンにならなくても、もともと特別なオンリーワンなんですけど、どうしても順位を比べたがる。こういう世界に一つだけの花イズムという部分では、スポーツ界ってまだまだ遅れているのかもしれません?

迎え撃つ群馬は、ここまで2分3敗で勝ちがない。しかも目下のところ3連敗中で、順位は最下位、すなわち二十位です。その子二十櫛にながるる黒髪のおごりの春のうつくしきかな、そう、「おごりの春」、盛者必衰の理をあらわしています。ということは逆から言うと、衰者必盛の理もあるかもしれませんので、ここから巻き返していく可能性に期待しましょう。……大槻さん絡みでいろいろ腰が落ち着かなかったってのもあるかもしれないですし。

 

□ともにファンタジーは追求しない

というわけでピッチに目を移します。まず岡山ですが、基本は左で崩して右で仕留める、って感じなのでしょうか。左はシャドーに田中、ボランチが仙波、WBが末吉でCBが鈴木ですからね。特に末吉が高い位置で絡めるとチャンスになってました。仕留める側の右は長身FWの太田に加えてのWBも長身の柳。柳、更生してますかね。いろいろありましたが。同世代のライバル、ヴェルディユースのFWだった郡はいろいろの部分を制御できずにサッカー界からはドロップアウトしましたが、やんちゃなヴェルディに対して行儀良さ目のFC東京ユース。行動とプレーで贖罪してください。ちなみに柳(やなぎ)と郡(こおり)でだいたい柳行李(やなぎこうり)ですね。

ともあれ、対する群馬はシステムが左上がりの442とか3421とかあれこれ言われますが、一つ確実に言えることは佐藤亮は右SHの位置、しかもほぼライン際にいるということです。逆足の滝君。そして高澤は、より平松に近いレーンで縦関係(前者が下で後者が上)になりがちだということです。

志向するサッカーは、アプローチは真逆ながら、少なくとも前半の戦い方は類似していたと思います。すなわち、リスクを避け、人数をかけずに、前線の裏抜けに託す戦い方です。ただ、岡山は昨今のポジショナルブームに則って、ある程度低い位置でボールを回して正しい位置取りができたらヨーイドンって感じなのに対し、群馬はスタンダードというか、クラシカルなカウンタースタイル。奪ったら前線が走って、何はともあれそこに向けてパスを出したり、あるいは高めで奪ったら一直線にドリブル突破、みたいな戦い方でした。

 

□シャビエルのラストプレー

渋〜い前半の戦いを見る限り、塩化ナトリウムに満ちた試合になるかと思いきや、後半早々に試合は動きます。川上がヤケクソ気味?にクロスの角度からシュートを撃ったら、それがオウンゴールを誘発して群馬が先手を取ります。しかし岡山も引きません。サイドからのパスを受けた仙波が完璧に折り返して相手守備陣を引き裂くと、そのまま完璧なミドルシュートを決めて試合は振り出しに戻りました。仙波、試合を通じて良かったですね。ペナ下で二次攻撃をコンダクトするってシーンが何度もあって、アジリティとパスの正確性などには惚れ惚れしました。

さて終盤の戦いですが、群馬は一貫してアタッカーの誰かが長い距離のドリブルすることで攻撃が可能になる。アタッキングサードにボールを運べる。その群馬の単騎突破を受け止めて、そこのクオリティ不足につけこんでボールを奪ってそのまま裏返すというのが岡山の基本的な攻撃パターン。ある意味、両チームとも攻撃の再現性という意味では物足りない部分を禁じえないのですが、それでも勝ち点3を奪うのが首位のチームだし、そこで勝ち点を得られないのが最下位のチーム。ロスタイムも尽きようとするラストプレーでシャビエルが決勝ゴールをあげました。岡山から勝ちそうな雰囲気はあまり感じなかったので摩訶不思議な勝利ではあるのですが、群馬が相手の前がかりに攻め続けてきても、慌てることなく悠然とマイペースにサッカーをしていたところがウイニングメンタリティというか、好調なチームの強さなんでしょうね。なんとも哲学的な一戦でございました。

大局的には大宮の完勝〜大宮アルディージャvsテゲジャバーロ宮崎(3/23)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

□古墳群ダービー

この一戦は大“宮”と“宮”崎ですから、そりゃ、“宮”対決なんですけど、それでは何も膨らまない。ということで、宮崎の思い出を探ってみると、去年だったか一昨年だったか、ユニリーバスタジアムに行きましたねえ。フェリーに乗りたくて。そのついでに佐土原の城下町を散策したのですが、江戸時代の城下町も現代では宮崎市郊外の駅から更にバスってところにあるものだから、微妙にムラ社会というか、散策しててもどこか地元の方々から監視されているような視線をずっと感じた記憶があります。

佐土原城下町からユニリーバスタジアムに行くために、一度、西都バスセンターに立ち寄ったのですが、さすがに様々な移動者が行き交うバスターミナルだけあって、よそ者への視線が柔らかくなった。どうにか少し落ち着いたわけですが、バスターミナルってだけでなく西都原古墳群という観光地があることも、“知らない顔”への耐性を強めているのかもしれません。そう、テゲジャバーロといえば“西都原古墳群”なのです。で、大宮といえば、言わずと知れた“さきたま古墳群”ですから、この一戦は“古墳群ダービー”と言って差し支えないでしょう。

 

□19グローイングアップvs圧倒的4位

さて長駆乗り込んできた宮崎ですが、今シーズンはここまで2分3敗の19位です。良くないですよね。というか、倉石さんがチームを去ってからずっと低空飛行。なので、この順位も通常運行といえば通常運行。しかし、いつまでも19のままさというわけにはいかない。予備校の湿っぽい廊下で運命の出会いを期待していてもしかたない。少しヤバい計画を立てでも、それぞれをトレジャーアイランドを一つずつ現実に変えていかねばならぬのです。

迎え撃つ大宮は好調です。3勝1分の圧倒的4位です。4位なのに圧倒的なのは消化試合が一つ少ないから。もし、この未消化分を勝ちとしてカウントすれば首位ですからね、圧倒的なのですよ。この3週間で岐阜に連勝してたりしますし。ルヴァンカップでJ3対決が実現したものだから、こういう不思議な現象が発生するらしい。

 

□圧倒的3得点

というわけでピッチに目を移します。まず宮崎ですが、アウェイユニは市松模様風なんですね。チームカラーがピンクなんで市松模様の桜柄。で、2トップがとてもガタイの良い11番橋本と、金髪でそれなりにガタイの良い41番の上野。市松模様+大型2トップとか……なんか、クロアチアっぽい。そんな宮崎ですが、志向するサッカーのスタイルは特に強烈なものは伝わってこず。まあ、大きなパスで大外のレーンを攻略したい感じですかね。いかんせん、ロングキックの精度が抜本的に不足していましたけど。あとは中盤でルーズボールを奪えたら阿野の孤軍奮闘アタッキングに賭けるとか、そういう感じでした。

対する大宮は、なんだかルヴァンカップとか天皇杯みたいなメンバー。例えば植田と種田は10代。さらに村上・清水・藤井など大卒ルーキートリオも元気に先発。とはいえ、彼らが実力で出番を勝ち取ったことも伝わってきた。サッカーのスタイルとしては、最終ラインとボランチで出し入れしつつ、ボールを横に動かしてから縦に行くという、いわゆる現代サッカー。縦のバリエーションが良いですね。ボランチからCFへのショートパス、最終ラインからウイングの縦抜けを促すロングパス、苦しいときに健勇のポストワークに頼るミドルパス、それぞれが高水準でした。

そんな調子ですから、必然的に大宮が宮崎を圧倒する。健勇のポストから茂木力也が決めたファインショット、右クロスに杉本健勇が強さを見せた2点目、そして、藤井が奪ったPKを杉本健勇が決めたゴール。前半だけで3点も入りました。

 

□わりと試合の流れの行き来はあった

過密日程も考慮してか、大宮はセーフティリードモードで後半開始に2枚替え。左のWGに泉、ボランチに石川を投入します。開幕戦とかのレギュラーメンバーなんで、真打ち登場とも言える。ってなこともあって、意図してか結果的か、後半の大宮は大人のサッカー、別名、受け身のサッカー。後半になって宮崎のセカンドボール回収率は確実に向上します。そして、比較的余裕を持ってボールをさばけたこともあって、宮崎が狙いとする右サイドからの攻撃とか、2トップにゴリゴリさせるシーンが目立つようになりました。で、そうやって、ある程度ボールに触れるようになると、橋本&上野の2トップが存在感を増す。この2トップ、どことなく相手の大宮で一時代を築いたノバコビッチズラタンを彷彿とさせるような。

ただ、このノバコビッチズラタンは後半の半ばに上野が交代したことで解体。宮崎は阿野も下げて、逆に大宮は下口を投入。この一連の選手交代で流れが大宮に戻ったように思われました。「大宮視点に立てば、WGでもあり似非ボランチでもあるように動く植田よりも、純然としたSBとして動く下口の方が、リードしているときの秩序は守れるってことなのかな?」なんて考えていたわけですが、そんなことを考えている横で、魚里のラストパスを橋本が決めて宮崎が一矢報いるのだから、サッカーは難しい。

大宮は健勇が交代してから、多少、押し込まれたときの守備に落ち着きがなくなりましたかね。健勇依存が進行するようだと危ないなと予感させたりしましたが、試合はそのまま3ー1でタイムアップ。大局的に見れば大宮が宮崎に完勝した試合だったと言えるのではないでしょうか。

 

ある意味でJ3らしい試合〜SC相模原vsFC琉球(3/17)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

 

□共通点を探すのが難しい

相模原と琉球の共通点を探すことなんて簡単だと思ったんですよね。「そら、高原やろ、おーん」って思ったのです。……高原はFC琉球ではない方の沖縄でしたね。FC琉球には“はーえすふぁう”とか付かないですし。となると俄然、難しい。次に思い付くのは、基地の街ってことですけど、なんか、政治的主張があるみたいになってしまうから、こんなところで雑に触れちゃいけない気がする。

他に思い付くのは、かつては相模原にも所属していた岩渕良太が現在では琉球の選手であるとか、相模原ではなく神奈川県という観点に立てば、神奈川県も沖縄県もいわゆる中心地が県南部に集中していて、北部は開発での環境破壊が比較の上では進んでいない点で共通するとか、それくらいしかない。そもそも相模原って括りが狭すぎるって話なんですけど。

 

□どちらも、まあまあ好調

さて、おそらく空路で相模原へと乗り込んできたであろう琉球は2試合を消化して1勝1分です。監督さんは金鍾成。最初に琉球を率いたときは快進撃でしたが、その後のキャリアでは精彩を欠いている印象ですね。少しだけ、最初に大分を率いたときにクラブ初のタイトルをもたらしながらも、その後は日本では精彩を欠いたシャムスカを連想させます。とはいえ同じ状況になりかけた大木武は再び喝采を浴びていますから、そっちのパターンになってほしいですね。

迎え撃つホームの相模原は、琉球より1試合多く消化していて2勝1分。好調ですね。というか昨シーズン後半からずっと好調です。若手縛りで悪戦苦闘していたなか、瀬沼と岩上というベテランが加わったタイミングで一気にチームが殻を破った。あと一歩のところまでチーム作りを進めてきた戸田監督の手腕はもちろんのこと、改めて“ラストピースがはまる”って状態の美しさ、そしてベテラン選手がチーム作りに及ぼす影響力の大きさを知らしめられました。

 

□最大の強敵は花粉と日差し

というわけでピッチに目を移します。まず琉球ですが、高木大輔と白井が2トップ。……なんか、ガンバの匂ひ。しかも今シーズンの琉球には藤春が加わったんですよね。この試合でも3バックの左で元気に先発出場、ますますガンバの匂ひ。システムはアンカーを置いた352でした。アンカーの平松を挟んだ左が佐藤で、右が岡澤。岡澤はセレッソですね。

一方の相模原は瀬沼も岩上もベンチスタート。両ベテラン依存状況ではなくなったらしい。戸田戦術が浸透したタイミングで、たまたま2人が加入したのか、2人の加入が戸田戦術の浸透を促したのか。そんな戸田体制2年目の目玉は、3バック中央に金城ジャスティンが抜擢されたことでしょうか。まあ、戸田さんが現役だった頃みたいに「3バック中央=リベロ=積極的攻撃参加」って感じでもないですけどね。

で、試合内容なんですけど、正直、花粉でそれどころじゃなかった。日差しも強くて気温も高く、風も吹く。そりゃ花粉が飛びまくりですよ。ただでさえ頭がぼーっとするし、薬を飲むからそれに拍車がかかる。花粉で目が充血している中で、日差しの跳ね返りでさらに目がシパシパする。風が強いから花粉に加えて粉塵が目に飛び込んでくる。ハードコンタクトの身として、大変にしんどい。もうね、コートを直視できないのよ。とりあえず序盤は相模原が押しまくるも、徐々に琉球がボールを外に逃がしながらアタッキングサードに押しかける回数を増やしていった、みたいな展開でしたかね。

 

□ともに突き抜けられず

後半の頭から相模原はISHに福井を投入。他方で琉球はWBの左右を入れ替えてきました。結果、ワタクシの目の前には、ずっと高安が。金沢時代には、試合中ひたすらヤンツーさんに「おいー、、、」って注意を受け続けていた、あの高安ですね。なんてことはともあれ、さしあたり相模原が再びペースを握り返しましたかね。

となれば、琉球としても流れを変えなければならない。ってなわけで、2トップを入れ替えて、庵原&石井快征のスピード系コンビを送り込みます。ただ、これについては功罪相半ば。この交代までは、白井がポストワークを頑張っていたんですよね。白井、あまり大きな選手ではないですが、足下の落としとか腰の強さとか、起点になるべく奮闘してました。そのポストワークを失った以上、グランダーのパスワークで全体を押し上げていくしかないわけですが、相模原守備陣の読みの鋭いパスカットなどを前に四苦八苦。

なかなか状況を打開できない金鍾成監督は、さらに小川を中盤に投入して、平松をサイドに出す。これが奏功したということでしょうか、この交代くらいの時間帯を境に琉球が中盤の構成力を取り戻すと、試合はまさに一進一退となります。ただ、残念ながら相模原にしても琉球にしても、決定打に欠きます。1度オフサイドで取り消された幻のゴールがありましたけど、それを除くと両チームとも「後は決めるだけ」ってシーンは作れなかったのではあるまいか。ある意味、J3上位同士らしい、「守備はそれなり、攻撃は物足りない」というままスコアレスドローとなりました。

実は伝説の名勝負だった?〜福島ユナイテッドvsロアッソ熊本(3/13)の周辺をウロウロと…☆現地観戦記☆

□天下の名城ダービー

ルヴァンということで実現したカテゴリー違いの一戦。毎年、この時期にお休みを頂戴するワタクシは極寒のナイトマッチへ参戦です。福島県といえば東西真ん中と縦に三分割して文化が形成されているわけですが、いったんそこを一緒くたにして福島県という括りで考えると、なんといっても会津若松城が思い浮かびます。となれば熊本には熊本城。一方は戊辰戦争で落城し、他方は西南戦争の激戦地となったという意味でも因縁を感じさせます。

ワタクシ、2022年の秋に初めて会津若松を訪ねたんですよね。さざえ堂とか。もちろん会津若松城こと鶴ヶ城にも行きましたよ。……リニューアル工事中だったよ。でもね、天守閣のリニューアル工事中には慣れているのですよ。熊本城が地震で大被害を受けてから、毎年一度は熊本城を訪ねるようにしていて、復興していく様というか、クレーンに吊される様を見てきましたので。ってなわけで、この一戦は天下の名城ダービーです。

 

□悪くない同士

さて、意気揚々とみちのくに乗り込んできた熊本。ここまでリーグ戦3試合で1勝1分1敗ですが、負け→引き分け→勝ち、ですので尻上がりに調子を上げている形ではあります。これまで慣れ親しんだ3313というか343というか334というかではなく3412に挑戦しているんだとか。もちろんトルシエ時代みたいな、フラットスリー+古典的ゲームメーカー+1st&2ndトップってことはないでしょうし、どういうものかと興味津々。

受けて立つホームの福島は、J3のややこしい日程配分もあって、現状まだ2試合で1勝1敗。悪くない。特に新人監督であることを加味すれば。その新人監督とは寺田周平さん。そうか福島、湘南閥から川崎閥へ乗り換えたのか?これまでは湘南との交流が深かったと思いますが、今シーズンは寺田監督だけでなく、松長根とか大関とかも所属していますし、寺田さん、なんか吾妻小富士とか磐梯山とかより背も高そうですし。

 

□熊本の貫禄

というわけでピッチに目を移します。まず熊本ですが、確実にターンオーバーしてるんですよ。でもね、なんか、ターンオーバー感がない。というのも、去年の主力がズラリと並んでるんです。松岡とか藤田とか大本とか。去年と今年とで、けっこうレギュラーの顔ぶれが変わったってことですね。注目のシステムは34+似非9番+2WGという配置。メッシをCBに置く3トップに近いが、2トップの実態が2WGってところがミソですかね。

一方の福島もJ3としてはネームヴァリューをある面々がターンオーバーしてスタメンに並びます。中でも樋口が中盤でなくCFとして出てるのが熱い。それをマークする熊本3CB中央は岡崎が先発してるのも熱い。システムは4123。ゆえにサイドに2枚いる、ことになっている。にもかかわらずSB裏をまるでWB裏のように使われまくりでした。それはつまり、熊本の2トップがそれぞれ大外のレーンを突いていたということです。

試合はキックオフ直後に動く。「熊本トップ下の藤井って誰?」ってスマホで調べているうちに藤田が決めたみたいです。その後も熊本は疑似カウンターからの裏返しで決定的なチャンスを量産する。量産するんですがシュートを外す。大崎とか、松岡とか、大崎とか、大崎とかが。で、こういうときはどうするか?そう、足で決まらないなら頭で決めれば良いのです、と言わんばかりのヘッドで大崎が追加点をあげました。

 

□福島の快哉

リードを奪われた福島ですが、決して悪くはなかった。ボールを奪うや、チーム全体として勢いを持って、かつ、小刻みなパスワークでペナルティエリアへと中央突破していく。J3なのに、めっちゃリズミカルに繋ぎまくる。そうなんですよ、数年前の川崎フロンターレそのものなのですよ。特に目立った選手を挙げると、前半は左サイドの森。フリーマンであるかのようにハーフスペース、さらには真ん中のレーンにまで入っていってリンクマンとなっていた。

目立った選手、後半は針谷ですかね。後半だけでなく前半からキレキレでした。どちらかというとフィジカルの短所があげつらわれるタイプでしたが、相性の良い指揮官と出会いましたね、マジシャンであるかのように躍動しまくり。ドリブルで2枚3枚剥がしてペナルティエリア内にドリブル突破してくんだもん。凄いよ。組み立てでも奪われないし。熊本もそうだったのですが、福島は確実にターンオーバーしているにもかかわらず、「今年はこういうサッカーを追求しているんだなあ」ってのがありありと伝わってきた。これはなかなか凄いこと。熊本はもちろんとして、今シーズンの福島、ひょっとして台風の目になるかもよ。

しかも時間の経過とともに福島が熊本を上回るようになっていったんですよね。具体的には福島がGK含めた最終ラインで繋ぐ→熊本がボランチを含めてストーミング→ボランチが出た分できたCBとのギャップを福島が突く、みたいな応酬がタイムアップまで強度を落とすことなくスリリングに繰り返された。実際に福島は試合終了間際に矢島が意地のゴールで一矢報いましたし、いやいやいや、まさかルヴァンカップ初戦でこんな試合が見られるとは夢にも思ってなかったです。天晴れ。